今、結婚相談所の会員の方からの婚活服スタイリングオファーが増えています。コロナ禍の先行き不安や寂しさから、独身がいいと思っていた人の中にも「誰かと寄り添って生きたい」と考える方が増えたようです。
「婚活ファッション、何を着ればいいの?」という問いに、私はこう答えます。「これまでの『あなたの歴史』が感じられる服を!」
私も若いころたくさん参加した合コン。このような場では、膝丈のワンピースで足元はパンプスなど、どなたにでも響く感じの良いファッションが重視されます。それはまだ互いの価値観が柔軟な時だから。しかし、人生後半戦を共にするパートナーを選ぶときまで、その万人受けスタイルを続けるのは問題アリ。ある程度年齢を重ねた方の婚活では、「これまで私はこう生きてきて、こんな生活を共にできる人と一緒にいたい」というテーマの「プレゼン服」を着てもらいたいのです。長年違うライフスタイルだった二人が一緒になる。それはもう「プレゼンでWIN-WINの関係を築く」位の気持ちでやるのが最善で、そのためには「あなたらしい」と褒めてもらえる装いで最適な相手を見つけるべし! なのです。
私が婚活スタイリングしたお客様のなかに、キャンプや登山など、アウトドアを趣味にされている女性がいらっしゃいました。でもお会いした際の服装からは、それがまったく感じられません。そこで私が提案したのは、スポーツブランドを中心に、でもカジュアルになりすぎないきれいめの装いでした。彼女の活動的な一面がスタイリングからもお相手に分かるといいな、と思ったのです。ほかにもレストラン巡りが趣味なら、その時に着るようなジャケパンやワンピース、美術館に行くのが好きなら配色の妙を感じさせる服に音のしにくい靴など、一人の時間も満喫できる趣味を感じさせる服だと、これまでのライフスタイルも互いにキープできそうでいいですね。
そしてその自分らしさに、アピール下手な人は「色」と「誠実さ」をプラスしてください。誠実で明るく傍にいてくれる、そんな人と一緒にいたいですよね。ではこの二つはどうしたら表現できるのか? まずは血色を補う明るい色のトップスを着て、これからも元気で一緒に過ごそうね、を表現。そして誠実さを伝えられるのは、清潔感と品のある服です。お互い初対面のときは、お相手がこの出会いを楽しみにしていたかどうかが気になるもの。「よそ行きの服だとバレると、気合が入っているようで恥ずかしい」と思う方もいるかもしれませんが、意外とお相手は嬉しかったりするんです。自分らしい=普段着でいい、訳ではなく、ある程度の頓着・洗練は必要です。そのしるしに「お相手がいかにも普段着な感じで残念な気持ちになった」というご感想は聞きますが「やり過ぎていて……」のようなご意見は少ないのです。
ゆっくり婚活ができる年齢でないとすると「私らしい一張羅」がベストだと思います。自分を表現する、明るい色の品のある服。これは決して老け見えせず、若作りにも見えません。
お出かけ前に上下左右前後から自分の姿をチェックし、いざ出陣。そして、お相手に会った際は、思いやりをもって選んでくれたであろう服装を「お似合いです」と褒める(これ大事!)。こうすれば、笑顔から会話が始まりますし、早く打ち解けることができて、趣味の合うベストパートナーにきっと巡り合えると思います。
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source : 週刊文春 2022年3月3日号