壇上で話をする一人の高齢男性。その表情は険しい。突如、右手を振り上げたかと思うと、近くに座っている男性の頭に上から平手を一撃。すると男性の首はガクンと垂れ下がり――。

 これは「総合資格」の岸隆司社長(71)が行ったパワハラ動画のワンシーンだ。

創業社長の岸氏(総合資格HPより)

「総合資格」は建築士・宅建などの資格予備校「総合資格学院」を運営する。一級建築士試験の合格者占有率は日本一。従業員数は約750人(昨年6月時点)で、売上高は約200億円にのぼり、全国に約90校を展開する。

「他校は動画配信授業が多い中、対面で授業を行うのが強み。2000年に68万円だった受講料が現在は倍以上になったが、受講者数は減っていない」(職員)

 同社は『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でCMも放送する大手だ。この総合資格を1980年に創業したのが岸氏だ。1999年以降、7年連続で高額納税者に名前を連ねるほどの成功を収めた。

「建築業界に貢献してきた自負があり、隈研吾さんのことも『はなたれ小僧』と言うほど。『現状維持は後退だ』が口癖です」(同前)

 2月13日の『biz search』(日テレ)には岸氏が出演し、「日本一の合格者を輩出する実績とサポート」と語ったが――。

「昨年10月、突然『100人をリストラします』と宣言し、90人近くの職員が退職に追い込まれた」(別の職員)

 冒頭の動画は3年前。元々パワハラ気質だった岸氏だが、昨秋からエスカレートしていったという。

右手を振り上げ、この後、男性の頭に一撃

 昨年12月16日の会議の動画がある。岸氏は部下が仕事の提案をしてこないと不満を語り、「Aはやったか? やっとらんわな。Bは? やってないね」と名指しで追及。職員に言った。

「社長と皆さんの間では、月とすっぽんどころじゃなくて、宇宙の果て、太陽とネズミくらいの差があるんだよ、レベル的に」

 強権を実際に発動したのが、昨年12月4日のリモート会議だ。映像には岸氏を囲むように男性職員7人が映っている。そこで岸氏はある職員をやり玉にあげ、「バカタレが!」と叱責した。職員が準備した大学教授の講義が、意に沿わない内容だったようだ。そして次々とこう言い放った。

「君にはもう辞めて貰うよ」

「もうボケが始まってる」

 解雇を言い渡された職員は、ただ頷くだけ。実際にこの直後、彼は会社都合で退職をしている。辞めさせられた社員は他にもいる。

「昨年11月、全職員に〈職責に関する承諾書〉にサインするよう通達があった。そこには『正当な理由なく期中に職責を放棄しない』というルールと共に、退職する場合は『6カ月以上前に辞意表明すること』など、就業規則とかけ離れた内容も含まれていた。その際、『弁護士に相談しているので待って』と伝えた職員は、『俺が信じられないなら辞めろ!』と社長に怒鳴られ、退職させられた」(元職員)

 セクハラ動画もある。昨年10月19日、仙台の職員とカラオケに行った時のものだ。職員が盛り上げる中、岸氏は石原裕次郎の『二人の世界』を熱唱。右手にはマイク、左手は女性職員の手を握っている。それに対し、戸惑った顔をする女性。だが次の瞬間、女性は更に困惑した表情へ変わる。社長が急に彼女の肩を抱き寄せたのだ。そして岸氏は女性を抱きしめたまま一曲を歌いあげたのだった。

カラオケで女性の肩に……

「職員は降格が恐く、止められない。昨年10月、社長の思い通りの仕事が出来なかった女性職員の頭を叩く事件もあった」(同前)

 OMM法律事務所の大塚和成弁護士が指摘する。

「人前で解雇を言い渡すのは、見せしめとも取れる。『バカタレ』と人格を傷つける言葉も使っており、民法709条の不法行為にあたる可能性がある。弁護士に相談したという理由で解雇になったのであれば明らかに不当解雇で、労基法違反にもなり得る。カラオケで女性の体に触れるのはセクハラ行為と認定される可能性がある」

 一連の行動の真意を聞くため、2月26日、会社を出た岸氏を直撃した。

――会議で辞めろと言った。

「いやいや」

――職員の頭を叩いた?

「そんなことはない」

――承諾書にサインせず、クビになった社員も。

「クビにはしてませんよ」

 そこまで言うとタクシーに乗り込み、去っていった。

 会社に質問状を送ると、概ね次のように回答した。

「(会議中にクビを通告したことは)前日に退職を通告することが決定しておりました。不当解雇には当たらず話し合いを行った上で、ご理解頂いたと認識しています。(承諾書の提出に際してクビにした職員は)説明を尽くしましたが、『会社都合による退職』となりました。(職員の頭を叩いたことは)事実です。行為自体は不適切であったと考えておりますが、不法行為とまでは言えないと認識しています。(セクハラは)女性から申し入れがあり、調査を実施した事実もあります。聞き取りなど複合的に判断し、不法行為には当たらないとして、女性職員にも上司から説明しています」

 予備校の教育者にも“資格”が必要かも。

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source : 週刊文春 2022年3月10日号