「たどり来て未だ山麓」
これは昭和32年、升田幸三実力制第四代名人が大山康晴十五世名人を破って、史上初の3冠制覇を達成したときの言葉だ。藤井聡太竜王が5冠達成後に発した、「森林限界の手前」の元祖ともいうべき名言なのである。
公式戦で600勝目を挙げてから約1カ月半経った私。いくつか勝ち数は加えたが、もちろん700勝はまだまだ。果たしてたどり着くのか。九段はどうか?
人生は諦めなければ負けない。なので、倒れるまでは前を向く……これが自分の主義だ。とはいえ、まずは「健康第一」である。
さて、区切りの勝ち数を達成したので、ここで自分の半生などを、数回に分けて振り返ってみたい。なお、このテーマは不定期である。
私が将棋を覚えたのは小学2年生、7歳の夏だった。時は昭和51年、モントリオールオリンピックが開催され、ロッキード事件が世間を騒がす。街では子門真人の「およげ!たいやきくん」が流れる――。正直、忘れていることも多いが、とにかくそんな時代であった。
父からトランプやオセロ、五目並べを教わる。その中の1つに将棋があったのだ。
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source : 週刊文春 2022年3月17日号