順位戦がクライマックスを迎える3月。約10カ月間のリーグ戦が終わり、解放感に包まれている棋士も多い。私もその一人で、それは「あれ」に関与するところが大きい。まずは少し前の状況から述べよう。
「駅前の和食の店、なかなかの高級店だけど行きますか?」
「降級点? 大っ嫌いですね。……あ、いやいや独り言です」
降級点(A級、B級1組以外の各組の成績不振者数名に付く。私の属するB級2組では、これを2回取ると降級)は降級への黄信号。振り返れば1年前のこの時期、私は順位戦を終えて3勝7敗。一つめの降級点を喫した。
もちろん降級そのものよりマシだが、これを取ってしまうと翌年度のリーグ内の順位が大幅に下がる。年収にも影響してくるし、良いことは何もないのだ。
(なに、来年10連勝で昇級すれば関係ないさ)
(いや、もう1回降級点を取ったら陥落だな)
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source : 週刊文春 2022年3月24日号