約700着と21着。私がこれまでのクローゼットチェックで見た最大と最少の洋服の数です。仕事の関係でドレスコードが多岐にわたる方と、少なく持ち、着回すと決めた方。理由やポリシーがあり、きちんと収納できた上で本人の目が行き届いていれば、どちらの服の数もその人にとって妥当だと私は思います。ただ、服を少なくお持ちだった方は、着回すために無難服ばかりが手元に残ってしまっており、気分が上がらないと弊社にいらっしゃったので、気分が上がり、なおかつ着回せる21着に挿(す)げ替えました。

 私個人の意見としては、年間で着回せて、急なお出かけにも慌てない洗練された服が中心のクローゼットであれば、特別な服や部屋着を除き、通常は年間50着程度で十分だと思います。多くの方が「買い足したら代わりに何かを処分」をしておらず、「高かった・まだ着られるので勿体ない・もらいもので処分しにくい」などの理由で服を増やし続けます。そうすると、いざ着ようと思ったときにクローゼットで皺くちゃになっていたり、買ったことすら忘れていたり。結果、いつも着ている服だけが目に入り「着るものが無い」「代わり映えしない」「去年は何を着ていたんだろう……」と嘆くことになるのです。自分でコントロールできる量を持ち愛用していく、というのが大人の嗜みですし、環境にも優しいですよね。

「よし整理しよう!」と思ったあなた! 今すぐやりましょう! できれば、適正量を知るために、一度クローゼットから服を全部出して、捨て時の服を見極めましょう。

 捨て時第1位は「傷んでいるもの」。有料でお直しやリメイク、クリーニングをしても使いたい、と思うもの以外は「お疲れ様」の気持ちで手放す。しかしその中でも、自分にとてもよく似合っていたと思うアイテムがあれば、それは、代わりになる服を見つけてから処分でも良いと思います。

 捨て時第2位は「懐かしいもの」。今着ると若作りに見えたり、過去に流行っていたものがこれにあたります。丈・柄・ウエストの位置・素材感などをチェックしてみてください。服だけを見て判断するのは難しいですが、着てみたらほとんどの方が「あ、これは処分だな」とわかります。面倒でも袖を通してみてください。懐かしいアイテムは、若い方が着るからヴィンテージ感があり素敵なのであって、そのままの世代がそのまま着てしまうと、ただ懐かしくなります。フリマアプリなどで、誰かもっと似合う人に渡しましょう。今どきのものと組み合わせられれば懐かしくならないので、着こなし方の参考として、雑誌などにも目を通してみてください。裾の処理やバランスなど、着方がバージョンアップされるはずです。

 捨て時第3位は「今の自分を助けてくれないもの」。若い時はシックな感じで似合っていたアイテムでも、今着るとただ地味に見えてしまう事があります。メイクやアクセサリーで盛ることができないならば手放す。着ないけれど処分の踏ん切りがつかない場合は、写真などデータで思い出として残しましょう。そして30代以降は見た目の変化も緩やかなので、ご自分の決めた軸に合うものだけに囲まれて生きるのがベストです。傷んだものだけ買い替える、というようにしていけば、むやみに捨てたり無駄買いをする事もなくなり、環境にもお財布にも優しいクローゼットになること間違い無しです。

イラスト 坂田優子

(しもとりまきこ (株)SPSO代表パーソナルスタイリスト。著書に『洋服で得する人、損する人』など。バンタンデザイン研究所講師や、企業・学校の制服デザインに加え、身嗜み含めたトータルプロデュースも行う。)

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source : 週刊文春 2022年3月24日号