今週号で、一人の記者が「書きデビュー」を果たしました。初めて、原稿を書き、雑誌に掲載されたのです。N君、25歳。小誌が昨年、記者未経験者を初めて特派記者として採用したことは、このニュースレターでも書きました。未経験者は3名。みな20代前半でしたが、Y君がラ・ランドのサーヤの熱愛をスクープし、K君は「おっさんずラブ」監督の不倫で先日デビューを果たしました。最後に残ったのがN君です。
彼は、新卒で大手人材情報企業に就職し、WEBディレクターとして働いていました。応募してきた彼に志望理由を聞くと、こう言いました。
「今の仕事は、デジタル時代の流れにあっているかもしれないが、突き詰めれば、グーグルのアルゴリズムにどう合わせるか。一生の仕事とは思えない。やっぱり、リアルな現場で、自分の面白いと思うものを取材して書ける週刊文春で働いてみたい」
12月に内定を出すと、一番早く3月に合流しました。正社員を辞め、特派記者の道を選んだのです。しかし、当初は苦労しました。同じ立場のY君はWEBの編集者、K君は女性週刊誌のグラビア編集者と記者未経験とはいえ、近い仕事だったのに比べて、N君の前職は取材や執筆とは全く縁がありません。
また、目から鼻に抜ける、一を聞いて十を知るというタイプではありません。先輩から厳しい言葉をかけられたり、取材先から怒られることもあったようです。私も大丈夫かな、と心配する一人でした。
ただ、「あれっ」と思ったことがありました。小誌のエース・M記者が「Nは事件取材に向いているかもしれない。事件記者として育ててみたい」と言うのです。理由を聞くと、「聞き込み取材が必須な事件記者は、可愛げとある種の鈍感力が必要。Nにはそれがあるかもしれない」。
さらに、張り込みのプロ・O記者も、ある案件で写真が撮れ、記事掲載が決まった時にこう提案してきました。「グラビアページをNに書かせてやることはできませんか」。
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source : 週刊文春