週刊文春 電子版

Do you agree with this book that is being taught with kids that babies are racists?(赤ん坊がレイシストと教える本に賛同しますか?)

町山智浩の言霊USA 第619回

町山 智浩
エンタメ 音楽

「女性とは何ですか?」

「赤ん坊は人種差別しますか?」

 上院議会で、バイデン大統領から最高裁判事に指名されたケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏(51歳)に対して、そんな奇妙な質問が浴びせられた。

 ジャクソン氏は、最高裁から引退するスティーブン・ブライヤー判事(83歳)の後任で、現在は連邦控訴裁判所の裁判官。バイデンが事前に約束したとおり、黒人の女性。2児の母。

 最高裁は、多数決で憲法判断をする。現在、判事9人のうち、6人が共和党の大統領に任命され、3人が民主党の任命。引退するブライヤー判事も民主党の任命だから、ジャクソン氏になってもバランスは変わらない。

 でも、判事を承認するために上院で行われた公聴会では、共和党議員からジャクソン氏の適性を疑う激しい質問が続いた。何がなんでも彼女の承認を阻止すれば、バイデン政権に大きな失点になるから。

「女性とは何か、定義してください」と迫ったのは、テネシー州のマーシャ・ブラックバーン議員。彼女はトランプの支持を受けて当選し、女性でありながら人工中絶に反対する保守派。

 なんで、そんなことを問うのかというと、アメリカでは今、トランスジェンダー(心と体の性別が一致していない人々)をめぐる論争が続いているから。ヴァージニア州の州知事選挙では、公立学校でトランス女性(男性として生まれたが女性として生きる人)の生徒が女子トイレを使用していいかどうかが争点になり、使用禁止を掲げた共和党候補が当選した。また、スポーツでも、トランス女性が女子の競技で勝つことが問題になっている。

 ここでジャクソン氏が「女性かどうかは本人が決めることです」なんて答えようものなら、党を挙げて糾弾するつもりでブラックバーン議員は質問したわけだが、ジャクソン氏は挑発に乗らず「定義できません。私は生物学の専門家ではないので」とかわした。

 続いて質問に立ったテキサス州のテッド・クルーズ議員は、2016年の大統領予備選に出馬したが、対立候補のドナルド・トランプから「おまえ、そもそもカナダ生まれだから大統領になる資格ないじゃん」と指摘されてボロ負けした。その後、クルーズはトランプの軍門に下り、議会乱入をいったん「テロ」と呼んだが、トランプ支持者に叱られて「すみません」と取り消したり、恥知らずな言動を続けている。ちなみにニュウドウカジカという深海魚に似ている。

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source : 週刊文春 4月14日号

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