「ジェイダ、『G.I.ジェーン2』、早く観たいよ」
3月27日、アカデミー賞授賞式のステージでコメディアンのクリス・ロックは言った。
客席のジェイダ・ピンケット・スミスはスキンヘッドだった。脱毛症のためだと公表していた。『G.I.ジェーン』(97年)は、デミ・ムーアがスキンヘッドで海兵隊員を演じた戦争映画。リドリー・スコット監督の傑作だが、興行的には失敗した。
そのジョークを聞いて、ジェイダの隣に座る夫ウィル・スミスは笑っていた。だが、ジェイダは複雑な表情。するとスミスはステージに上り、クリス・ロックの顔を平手打ちした。鈍い音を中継のマイクが拾った。
自分は例年通り、WOWOWの授賞式中継の解説者としてそれを観ていたが、最初は仕込みのヤラセだと思った。だが、客席に戻ったスミスが「そのFuckin'な口で俺の女房の名前を呼ぶな!」と怒鳴った時、それが本気だとわかった。ABCテレビから全世界に生中継されているのに放送禁止用語を使ったからだ。
実は、ビンタに至るまで、オスカーとスミスには長い因縁があった。
ウィル・スミスはもう20年以上、アカデミー主演男優賞目指して努力してきた。2015年、彼は『コンカッション』に主演した。NFL(全米プロ・フットボール・リーグ)の選手たちが脳障害に苦しんでいる事実を明らかにした実在の医師を地味にリアルに演じ、今度こそオスカーを狙ったが、ノミネートされなかった。その理由は……。
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source : 週刊文春 4月21日号