戦争は怖い。あらゆるものの正体を暴いてやまない。

 14日の各紙朝刊で暴かれたのは共産党の正体だ。読売によれば、志位和夫委員長は13日の記者会見で、党綱領通り「自衛隊の解消を目指す方針は変わりない」と言いつつ、侵略を受けた際は「自衛隊にも頑張っていただく」とし、さらに「攻められる心配があるうちはなくさない」と語ったそうな。

 存在を否定する自衛隊に有事対応はお願いする傲慢さとご都合主義。戦争がなくなることを解消の条件とする空想主義。現実の戦争の惨禍を目の当たりにしても党の綱領だけが大事な視野狭窄ぶり。ロシアの猛攻に耐え国土を守るウクライナのゼレンスキー大統領ら世界の人々がこれを聞いたらどう思うか、日本人として恥ずかしくなる。

 しかも会見は綱領を説明する新著の出版に併せて開いたというのだから、開いた口が塞がらない。それなのに、驚きや突っ込みが感じられない各紙の記事がまた面妖だ。

 見出しが酷い。「志位氏が党綱領解説本『現実路線』アピール 野党協力につなげる狙いも」(朝日)、「自衛隊活用 整合性訴え 共産委員長『党綱領と矛盾せず』」(日経)など。

 各紙とも矛盾やご都合主義に記者が突っ込んだ形跡さえ感じられず、これではただの出版記念の宣伝記事としか思えないではないか。

 ただ、共産党の悪癖は半世紀前も同じだったらしい。月刊「文藝春秋」の今年2月号に載った特集記事で知ったのだが、昭和48年3月号の同誌で松本善明・外交政策委員長代理は、単独政権を否定し社会党と民主連合政府を作るとしたうえで「わたしたちは自衛隊は解散すべきだという意見だけど、社会党はすぐに解散させないで、つまり、国土警備隊というものに変えるといっているのです」と言い、名称を変えて存続させることを容認しているのだ。

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source : 週刊文春 2022年4月28日号