日本の新聞、零長多短

新聞不信

「週刊文春」編集部
ニュース 社会

 ロシアによるウクライナへの蛮行に関する日本メディアの報道は、当事者であるウクライナとロシア政府、欧米政府の発表か、海外メディアの報道の転電ばかり。ほとんど独自情報がないから最近は英BBCや独ZDFなどの報道をクリッピングしたNHKの番組を見るようにしている。

 これを見ていて改めて痛感するのは日本のメディアの取材力のなさだ。東欧で起きている戦争だから欧米メディアに劣って当然と開き直っているのかもしれないが、万が一、北東アジアで有事が起きた場合の報道でも欧米メディアの後塵を拝するのではないかと思うほどだ。

「Nikkeiの名前を世界に知らしめる千載一遇のチャンスと考えて、もっと必死にがんばりましょう!」。日経の編集局長がそういう社内メッセージを出したという週刊文春の記事を読んだ。その後、3月31日付朝刊でプーチン大統領の音声から心理状態を分析した一面トップ記事があったが、これが「知らしめる」一手だとすれば憐れみを感じる。対抗する力がないことは自明なのだから、身の丈にあった報道をしたらどうか。

 ウクライナ報道で興味が惹かれるのは同国のITスキルの高さだ。「大統領が国外脱出をした」というフェイクニュースが流れると、SNSを通じて即座に否定。ロシア軍が撤退した街の惨状を鮮明な画像で世界中に流した。

 なにより驚いたのは、キーウ近郊のブチャで民間人の大量虐殺があったことが判明した後の対応だ。ゼレンスキー大統領が現地を訪れたのは4日だが、国防省が殺害に関与した可能性のあるロシア軍兵士の名簿を公開したことを読売が報じたのは5日付夕刊という早さだった。

 これらを見ていると、新型コロナウィルス感染者の実態把握に手間取り、保健所と医療機関との連携の拙さを露呈した日本のIT後進国ぶりを実感せざるを得ない。出遅れを取り戻そうとばかりにデジタル庁なるものができたはずだが、活動実態を報じているものを目にした覚えがない。

 日本のメディアがなお優位性を持つのは国内報道だろう。だとすれば世界情勢を最前線で報じているフリをするより、この異常事態から透ける日本の未熟さの改善を促す報道をした方がまだ良い。

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source : 週刊文春 2022年4月21日号

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