あっと驚かせ、なるほどなと唸らせて、これは許せんと憤らせる。それが新聞の醍醐味だとすれば、読売新聞オンラインが12日早朝に配信した「校長除く全教職員が授業取りやめストライキ…和歌山の私立高校、4月分給与未払いで」との記事は、その3点を揃えた良作だった。

 事実自体が驚きだから、余計な筆はいらない。学校法人南陵学園(静岡県)が運営する私立和歌山南陵高校(和歌山県日高川町)で、23人の教職員に給与が所定日までに払われず、労働基準監督署から是正勧告を受けた。

 しかも、授業料を国が補助する就学支援金を受け取っておきながら、法人側は保護者側に授業料計2000万円を還付しておらず、和歌山県から指導を受けていたというのだから開いた口が塞がらない。

 教職員側が還付遅れと給与未払いの両方で説明会の開催を求めたのも当然だ。校長を兼務する理事長は教職員向けの日程は示したが、保護者向けの方は明確にせず、11日にストが決行された。

 波紋を巡るデータも目配りが利いている。県は授業を行うよう求め、教職員側も12日再開の方向で検討していると書く。一方で理事長は取材に対し「現時点では回答を差し控えます」とのコメントを出したとある。

 これをどう見るか、識者らの反応が面白い。北海道大学の佐々木隆生名誉教授が「いくら聖職だといっても無給で働くわけにはいかず、ストライキはやむを得ない手段だったのだろう」と一定の理解を示す一方、大阪教育合同労働組合の関係者は「これほど大規模な教職員のストライキは聞いたことがない」「生徒の学びへの配慮がどこまであったのか」と驚いたそうな。日教組が賃上げ要求や文部行政批判でストを連発した「昭和は遠くなりにけり」ということなのだろうか。

 ただ、白眉は末尾だろう。

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source : 週刊文春 2022年5月26日号