「マリウポリ制圧をもって、特別軍事作戦の終了を宣言したいのだと思います」

 5月20日、ロシアのショイグ国防相が「マリウポリとアゾフスタリ製鉄所を“完全に解放”した」とプーチンに報告したのを受けて、筑波学院大学の中村逸郎教授はこう分析する。

中村氏(筑波学院大HPより)

 マリウポリの抗戦拠点だった製鉄所。2000人以上のウクライナ兵が投降し、武装組織「アゾフ連隊」の幹部が全員連行されたという。

「プーチンは『特別軍事作戦』の大義名分に『ウクライナの非軍事化と脱ナチズム化』を掲げています。投降したウクライナ兵を軍事裁判にかけ、『アゾフ連隊はネオナチ組織だった』などと発表し、自分たちの行動を正当化させるのでしょう」

 3カ月近く戦闘を繰り広げ、制圧できたのは親露派地域の一部にとどまる。

「本当はウクライナ東部を完全に制圧し、親ロシア的な共和国として独立させたかったはず。遅くとも独ソ戦の勝利を祝う5月9日の戦勝記念日までには勝利宣言をするつもりだったが、先の見えない状況に陥った」

マリウポリの製鉄所は制圧したが…

 誤算はなぜ生じたのか。国家保安委員会(KGB)出身の諜報部員だったプーチンが、軍隊の動かし方に疎かったことが挙げられる。

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source : 週刊文春 2022年6月2日号