「プーチンにとって全く想定できていなかった。『誤算』という言葉がこれほどぴったりくる状況はない」
と、筑波大学教授の東野篤子氏が強調するのは、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請がロシアに与えたインパクトだ。

「ポーランドやチェコなど、これまでのNATO拡大は、加盟を希望する国が、短くても5年という単位で改革を行い、基準を満たしてやっと加盟できるというものでした。政治・経済・軍事的に、加盟国よりも高水準で改革の必要のない国が仲間入りするのは初めてのことです」
そのため、申請から加盟までの手続きも、史上最速で進む見込みだという。
「大方の予想では4カ月と言われています。ただ実は申請前から相当準備が進んでいたので、トルコが反対を取り下げれば、さらに早期に実現できるかもしれない」
前代未聞のスピード加盟。両国の周到な準備の背景にはプーチンの暴走がある。
「事の発端は昨年12月。侵攻前、ウクライナのNATOへの接近を警戒したロシアが出した“12月提案”でした。NATOの東方不拡大を法的に保証しろ、というのが要求内容。まったくナンセンスな話ですが、フィンランドとスウェーデンにとっては自分たちの将来的な加盟も否定されかねず、要求自体が衝撃でした。結果的にはこれを契機に両国内で加盟が検討され、もの凄い勢いで準備が進められて、今に至ります」


そもそも、ウクライナ侵攻におけるロシアの“大義”は、ウクライナのNATO入りなど「NATOの東方拡大」からロシア自身を守る“自己防衛”にあった。
「NATOは1インチも東に拡大しないと約束した。我々は騙されたのだ」
2月24日、プーチンは演説で西側を批難し、“特別軍事作戦”を開始した。だがこの認識自体が「全くの事実誤認」だという。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
すべての記事が読み放題
月額プランは初月100円
既に有料会員の方はログインして続きを読む
有料会員になると…
世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!
- スクープ記事をいち早く読める
- 電子版オリジナル記事が読める
- 音声・動画番組が視聴できる
- 会員限定ニュースレターが読める
source : 週刊文春 2022年6月2日号