「カンヌでは完全に“巨匠”として見られています。シネフィルだけでなくごく普通の市民たちも、是枝監督の新作を楽しみにしている。宮崎駿監督やスティーブン・スピルバーグ監督に勝るとも劣らない認知度です」(現地を取材する映画評論家・石津文子氏)

写真提供 ゲッティ

 5月28日に閉幕したカンヌ国際映画祭で、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初の男優賞を獲得した、是枝裕和監督作の映画『ベイビー・ブローカー』。

「是枝監督が韓国の資本を得て、韓国で撮影した作品。キャストや主要スタッフはすべて韓国人です。本作のような“国籍のあいまいな映画”は世界的なトレンドになりつつある」(社会部記者)

 是枝監督はメディアの取材に対し、日本のトップの役者は世界に負けていないと前置きした上で、「このままいくと手遅れになる」と日本映画界への危機感も口にした。

「韓国ではスタッフの週52時間制や賃金を保障する労働契約がきちんと整備されている。このままでは日本の若者が映画界を目指さなくなる、と危惧していました」(前出の石津氏)

 相次いで浮き彫りとなる日本映画界のハラスメント問題。12分間のスタンディングオベーションに包まれた同作の公式上映には、河瀬直美監督の姿もあったという。

 

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source : 週刊文春 2022年6月9日号