女性記者らにセクハラ発言を重ねていた疑惑が国会でも論議を呼んでいる細田博之衆院議長(78)。新聞、テレビなどの大手メディアが、細田氏から自社の女性記者がセクハラ被害を受けたことがあるか、調査していることが「週刊文春」の取材でわかった。「週刊文春」の取材に対して、6社が調査を認めた。

細田氏は当選11回。官房長官や党幹事長など要職を歴任し、2021年11月、衆院議長に就任した。
「5月10日に自民党議員の政治資金パーティに出席した細田氏は『議長になっても、毎月もらう歳費は100万円しかない』などと発言し、批判を浴びました」(政治部記者)
「週刊文春」5月26日発売号では、細田氏が女性記者に「うちに来て」などと誘っていた問題や、自民党女性職員のお尻を触った疑惑などを報道。細田氏は取材に対し、回答しなかった一方、発売当日に「今後、通常国会閉会後、弁護団とも協議し、訴訟も視野に入れて検討いたしたい」とするコメントを発表している。

「週刊文春」では、大手紙、通信社、NHK、民放の全14社を対象に、「(1)細田氏からのセクハラ被害について社内で調査を行ったかどうか」「(2)調査の結果、セクハラ被害はあったか無かったか」「(3)セクハラ被害に真摯に対応せず、隠蔽に加担したりしていないか」などを問う質問状を送付した。
このうち、読売新聞とフジテレビは「セクハラ被害の報告は受けていない」などと細田議長のセクハラを否定。5社は調査したと回答したが、セクハラの有無は回答しなかった。また、8社が調査の有無を回答しなかった。
14社の回答は以下の通り。
読売新聞
「細田氏を担当したことがある本紙の女性記者に対し、聞き取り調査をしましたが、ご質問にあるように、本紙記者が『セクハラと言えるような発言を受けていたことを嘆いていた』ことや、読売新聞社では『真摯に対応せず、セクハラの隠蔽に加担した』という事実は全くありません。本紙記者は、細田氏への取材の過程で、不快感を持ったことはなく、会社に対し連絡や相談をすることはなかったと話しています。
本紙では、所属長から記者らに向けて、『政治家、官僚からセクハラを受けたら、男女問わず申し出てほしい。取材とは全く別問題であり、会社として厳正に対処する』と呼びかけています。
読売新聞社は、2018年に当時の財務次官が女性記者へのセクハラ疑惑を報じられて辞任した問題などを受け、それまでのハラスメント防止規定とは別に、外部の取材先や取引先からのハラスメント被害等が生じた場合のための社外ハラスメント対応規定を制定しており、同規定に沿って迅速かつ適切に対応しています」(読売新聞グループ本社広報部)

朝日新聞
「セクハラの隠蔽に加担したという事実はありません」(朝日新聞社広報部)
毎日新聞
「調査を実施しましたが、調査結果につきましては外部への公表を差し控えます。なお、セクシュアルハラスメントは許されることではなく、社として常に毅然とした対応を取っております」(毎日新聞社社長室広報担当)
日本経済新聞
「(1)調査は実施しました。(2)セクハラに関する社内調査の内容については関係者のプライバシー保護のため、お答えしていません。(3)ご指摘のような事実はありません。社内、社外を問わずハラスメント行為があれば厳正・適切に対応する体制を整えております」(日本経済新聞社広報室)
産経新聞
「取材に関することには原則お答えしておりません。ご指摘のような事実は承知しておりませんが、一般論として取材上のセクハラ案件については適切に対処しております」(産経新聞社広報部)

東京新聞
「ご質問の内容についてお答えすることはありません」(東京新聞編集局)
共同通信
「調査はいたしましたが、内容についてはお答えできません。また、ご指摘の『真摯に対応しなかった』『隠蔽に加担した』との事実はありません」(共同通信社総務局)
時事通信
「個別の取材活動に関する質問にはお答えしておりません。記者から取材先によるハラスメント行為に関する訴えがあった場合、必要な調査を行い、厳正に対処します」(時事通信社長室)
NHK
「NHKは『ハラスメント防止規程』を定めており、取材先からのセクハラ行為を含め、ハラスメントのない働きやすい職場環境の確保に取り組んでいます。取材先からのセクハラ行為について相談があった場合には、事実関係を把握した上で、本人の意向を踏まえつつ対応しています」(NHK広報局)
日本テレビ
「取材の過程についてはお答えしておりませんが、日本テレビでは、ハラスメントについては通報窓口を設置して対応しております。また、2018年に起きた財務省事務次官の問題を契機に、上長が取材現場ともさらにコミュニケーションをとっています」(日本テレビ社長室広報部)
テレビ朝日
「当社では、ハラスメント問題について社内、社外に相談窓口を設けるなど、常時、報告や相談をできる環境を整えています。プライバシーの観点から個別の事案についてはお答えしておりませんが、ご指摘のような『真摯に対応せず、セクハラの隠蔽に加担した』という事実はありません」(テレビ朝日広報部)
TBS
「調査しましたが、セクハラ隠ぺいにあたる事実は確認されておりません」(TBSテレビ社長室広報部)
フジテレビ
「(1)当社には当該人物に限らず、常日頃からセクハラ等の事案があった場合は随時、上司や担当部局等に報告・相談するような仕組みを整えております。(2)該当するような事案の報告は受けておりません。(3)ご指摘のような事案についての報告は受けておりません。」(フジテレビジョン企業広報部)

テレビ東京
「現在、社内で調査中です」(テレビ東京広報局広報部)
細田氏からのセクハラ被害について調査していることを認めたのは、読売新聞や毎日新聞、日経新聞、共同通信、TBS、テレビ東京の6社。「セクハラ被害の報告を受けていない」などと回答したのは、読売新聞とフジテレビ。その他の12社は、細田氏から女性記者へのセクハラ被害の有無について回答しなかった。
多くの大手メディアが細田氏のセクハラ問題に関して調査に乗り出したことで、更なる疑惑の解明に繋がるのか注目される。
6月1日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および6月2日(木)発売の「週刊文春」では、細田氏が女性記者にかけた「圧力電話」、細田氏に繰り返し自宅に誘われた女性記者の新証言、国会閉会後に開催予定の政治資金パーティ、朝日新聞が社説で細田氏のセクハラを批判した経緯などについて詳報している。
source : 週刊文春 2022年6月9日号