岡本太郎に憧れる同級生4人で結成したロックバンド「OKAMOTO'S」。ベースを奏でる男は、デビュー13年目の今も大切にすることがある。その秘めた思いとは――。彼の日々に密着した。

撮影 杉山拓也/ヘアメイク 高草木 剛/スタイリング TEPPEI

 5月上旬だというのに夏日を記録したこの日、ハマ・オカモトは大阪で開催された野外ライブイベント『OTODAMA'22 〜音泉魂〜』のステージにいた。まだ本番前。にもかかわらず、他の多くのバンドがスタッフに任せるサウンドチェックを、OKAMOTO’Sはみずからステージに出て行なう。するとその音に引き寄せられるように、そわそわと、観客が客席エリアに集まってくる。

「メンバーが出ていってリハーサルをするのは、すごく大事なことだと思います」

 ハマは「意識の共有」と表現する。

「ライブでは同じ空間にいるという意識を観客と共有できるんです。そのための空気作りが、特に音楽フェスみたいな場では重要だなと。僕らが目当てじゃないお客さんでも、リハーサルにメンバーが出ていくと、“あ、本物じゃん?”みたいな空気になる。だからあれはすごく効果的なんだと思います」

 そして本番。1曲目から観客は両手を振り上げ、体を揺らし、会場には熱気と高揚感が溢れる。OKAMOTO’Sが生粋のライブバンドである証だ。

 中学2年生で音楽を始めたハマが、OKAMOTO’Sのベーシストとしてデビューしたのは2010年、19歳のときだった。メンバーはみな中学時代からの同級生だが、彼は既にバンドを組んでいた3人に誘われるかたちで、前年にそこに加わった。「騙されたんです」と彼は言う。

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source : 週刊文春 2022年6月16日号