また、この季節が巡ってきました。人事異動の内示日です。今年は6人が他部署へ異動し、3人が「週刊文春」に来てくれることになりました。残る3人は、4月に配属された新人です。異動する人たちは、長い人は6年、短い人でも3年。デスク2人を筆頭に「週刊文春」を中核で支えてくれた人ばかりです。この大きな穴を、新たに加わった3人と、新人を含めた現有メンバーの戦力アップで、埋めていかなければなりません。ただ今回、異動する人たちも、みんながみんな来た当初から、バリバリの即戦力だったわけではありません。
今年、“異動の大本命”(⁉)と見られていたS記者もその1人です。S記者は、女性誌や広告の部署を経て、「週刊文春」に配属されました。入社時からの週刊志望でしたが、30歳を目前にようやく希望が叶いました。配属されたのは、私の班でした。
最初の原稿を見た時はびっくり仰天。取材しているテーマの説明が長く、原稿の半分を過ぎても取材の結果が登場していませんでした。他にも、思いが強すぎるのか、冒頭から取材相手をぶった切る表現も……。
「いつ寝ているのか」というぐらい資料を読み込み、朝から晩まで取材をするので、与えられた文字数の倍ぐらい書いて、「削れません」とよく泣きが入っていました。でも、その割に取材の一番面白いところが入ってなかったり……。
決して器用なタイプではありませんが、とにかくブルドーザーのように取材をします。ある事件の取材で、新聞社から来たO記者が朝7時に関係者を朝駆けしたところ、もう家にいませんでした。翌日は、彼女が朝駆けしたのですが、5時から待っていたそうです。O記者は「新聞でもあんな人いませんでした」と驚愕していました。
手を抜かないので、アシについた時、「書き」からの信頼は厚いものがありました。そうして、先輩たちから学び、取材や原稿もどんどんよくなっていきました。
彼女の素晴らしい点は、記者として一番大事な「これを世の中に伝えたい」という思い、志があることです。そのために必死に取材をする。その思いが、取材相手を動かす場面を幾度となく見てきました。
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source : 週刊文春