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「週刊文春」ナンバー2の「無私」

編集部コラム 第64回

「週刊文春」編集長
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 気がつけば、今のメンバーで作る最後の号を迎えています。小社は6月30日が、人事異動の発令日となるためです。5人いる特集班のデスクは、在籍5年と一番長かったMデスクが異動することになりました。実は、Mデスクは私の一期先輩です。小社は今や珍しくなった年功序列人事の会社で、「週刊文春」編集部において、デスクが編集長より上というのは、私の知る限りありませんでした。

 4年前、私が編集長の内示を受けた時に、「先輩ではあるが、もしMさんさえよければ、デスクとして残っていただきたい」と会社にお願いしたところ、Mさんは受けてくださいました。それまで、Mさんは後輩の私のことを「加藤君」と呼んでいましたが、内示を受けた日に「今日から加藤さんと呼びますので」と言われました。以来4年、その働きぶりは「無私」という言葉がぴったりでした。

 もともと、Mさんは特集班を希望していたわけではありません。バイクや音楽が好きな趣味人で、酒井法子の大ファン。彼女が、覚せい剤で逮捕された時には「ショックで会社を休んだ」という都市伝説が残っています。「週刊文春」で、酒井の熱愛を担当した時は、深いため息をついていました。

 過去に「週刊文春」に在籍していた時は、主な活躍の場は連載担当のセクション班。阿川佐和子さんの対談を担当し、阿川さんからの信頼は厚いものがありました。阿川さんは今も編集部に寄られると、しょっちゅうMさんと雑談されています。前部署の文庫部では、佐伯泰英先生にその筆力を見込まれ、先生の作品完結の特別付録として、編集者ルポを書いています。

 そんなMさんが5年前、特集班デスクの内示を受けた時は、思わずのけぞり、しばらく立ち上がれなかったそうです。特集班デスクは毎週、切った張ったの修羅場の連続。社内でも屈指の大変な仕事です。しかし、Mさんは不平不満を外に出すことはありませんでした。

 特に、私が編集長になってからは、編集部のナンバー2として、さまざまな無茶ぶりにも献身的に応えてくれました。Mさんとは毎週日曜日の夕方、原稿料などの支払い額を決める時間がありました。その話自体は、5分ほどで終わるのですが、さまざまな相談をMさんにしていました。雑誌作りにまつわる私のアイディア、意見をMさんに聞く。時には、後輩には言えないような愚痴も話しました。それは、Mさんが、本当に「無私」で、会社のこと、編集部のこと、そして私のことも考えてくれる人だったからです。その信頼感があるMさんには、本音で自分をさらけ出すことができました。本当に、この時間は私にとって心を落ち着かせ、考えを整理する大事な時間でした。4年前、前編集長から10歳若返る形で、編集長になった私が、これまで何とかやってこれたのは、ナンバー2・Mさんの支えあってのことです。

 次の号が、Mさんとの最後の号になる、はずでしたが……。新デスクが、前の職場の仕事の関係で2週間、合流が遅れることになりました。そのため、Mさんには、2週間延長して、デスクを務めていただくことに。さすがに、Mさんも「えっ」と頭を抱えていました。最後の最後まで、私(いや会社の)の無茶ぶりに振り回されることになったMさん。次は、電子書籍の部長として、大事なデジタル部門を担当されます。活躍を誰よりも祈っています。

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source : 週刊文春

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