「全ての罪を強く否定する」

 6月16日、ロンドンの治安判事裁判所で、俳優のケビン・スペイシー被告の弁護人は、こう述べた。

米アカデミー賞俳優でもある

 今回、スペイシーが訴追されたのは、2005〜13年に起こした性的暴行など5件だ。彼がロンドンの、オールド・ヴィック劇場の芸術監督を務めていた時期に起きたとされる。

「発端は17年の#MeToo運動。この時、スペイシーへの告発も続出し、これまで約30人の男性が声を上げた。俳優のアンソニー・ラップは、14歳の時に性的関係を迫られたと告発。スペイシーも『酔っていてあまり覚えていないが、不快な思いをさせたのなら陳謝する』と語っている。そして米英で当局による捜査も始まった」(英紙記者)

 オールド・ヴィック劇場は17年11月、「20件もの告発があった。うち14件は警察に届け出るよう被害者らに強く推奨した」と明かした。

 ただ実際に裁判になったのは、実はこれまで0件。米マサチューセッツ州の18歳のバーテンダーへの暴行疑惑は、刑事告訴されたが、途中で被害男性が態度を変え、証言を拒否したため棄却された。マッサージ師の男性への暴行疑惑は、男性が病気で亡くなったため、裁判にはならなかった。

 訴訟に至らなかった大きな理由が“時効”だ。時効の期限は各国で異なる。日本は強制わいせつで7年、強制性交等罪でも10年で時効となる。05年の性的暴行は、日本だと起訴できない。米国は州によって法律が異なり、犯罪の重さ、被害者が未成年かどうかなどにより時効の期限・有無が定められている。だが英国の法律では、基本的に性犯罪について時効が無いのだ。

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source : 週刊文春 2022年6月30日号