「夜回り先生」の愛称で知られる元高校教諭で教育評論家の水谷修氏(66)が、先の参院選で参政党から東京選挙区に出馬した河西泉緒(かわにしみお)氏(41)を名誉毀損で、東京地裁に民事提訴することがわかった。

提訴を決めた水谷修氏 ©共同通信社

 参政党は比例代表で176万票を集めて1議席を獲得。政党要件を満たし、政党交付金も受けることになった。

 河西氏は現在銀座のクラブのオーナーママで、製菓の専門学校を卒業すると、パティシエとして働いたり京都の寺で精進料理を修業したという経歴の持ち主。20代前半の頃にはホームレス経験もあるという。参政党から東京選挙区の候補者として擁立された。

河西氏(本人ツイッターより)

 水谷氏が問題視したのは、そのホームレス経験に触れた6月21日の河西氏の街頭演説だった。

水谷氏からレイプされそうになったと主張

 河西氏は演説でこう語っている。

「ホームレスしたんですよ。鎌倉駅でずっと寝て泊まって1週間やったんですよ。(中略)1週間したら、いろんな事件が起こったんです。夜回り先生っていうのがいて。有名な。教頭先生のこんなかけて、『僕はこういう者です、君は何をしているんですか?』『ホームレスしてるの』『危ないよ! こんな若い子が』『いいの。私が自分の意志でやってるから』『ダメだ!』って言って携帯でいきなり奥さんに電話するんですよ。トゥルトゥルっていって、『うち狭いですけど、良かったら来てください』って奥さん言うんですよ。『いやいやいや、私好んでホームレスしてますから!』『ダメ、来てください。狭いけど』『ありがとうございます』って行くわけですよ。『歩いて10分くらいで着くから』って言って。5分、10分経っても着かないわけですよ。どんどん暗いところに行くわけですよ。どこ行くのかなぁ、『着くんですか?』と言ったら、浜辺に着いて。そこでいきなり押し倒されちゃって。ヤる、ヤらないで、すったもんだしたわけですよ。でも私ね、機転、ひらめいて、『え~、こんな砂場でイヤです。ちゃんとしたとこ、行きましょう』って手を引っ張って行って、そうしたら交番が出てきたんですよ、歩いて10分で。そこに入れて、『この人ね~!』って言ったんですよ。一応取り押さえられました。だけど私はそれでお金が欲しい人って警察に疑われちゃって、すごい職質されたりしたんですけど、ちゃんと事情を説明して、こうなってって言って砂場まで連れて行ったら、ちゃんと争った跡とか、私のここに手形のアザが付いていて、『ごめんね、疑って』っていうことで逮捕されちゃったんですね、その方。あと2カ月で退職金が3000万かな、もらえるのに、結局私が人の人生を巻き込んでしまったということで、すごく反省したんですよ。魔が差しちゃっただけなの。その人悪い人じゃないんですよ。そうやって、世の中助けてた人なんだから。新聞記事にもなっちゃったんだから、私」

 つまり、夜回り先生こと水谷氏に保護の名目で浜辺に連れて行かれ、レイプされそうになったというのだ。

水谷氏「彼女が何を言ってるのか、ちっともわからん」

 水谷氏に事実確認を求めると、「全くのウソ」と言い、こう説明した。

「鎌倉駅で夜回りはしたことはないし、あそこはその必要のない場所です。あの辺で子供たちに危険がある場所といえば、藤沢ですよ。

 私はこれまで横浜、新宿、渋谷を中心に20万人から30万人の子供に声掛けを行ってきました。もしかしたら、その中に彼女がいるのかもしれない。でも、私は声掛けをして保護が必要だと思ったときには、まず100%警察に渡します。家出をしてきた子を親の許可なく、家に連れて行ったり泊めたりすれば、誘拐になります。当然、子供を襲ったりしたことはないし、逮捕されたこともありません。彼女が何を言ってるのか、ちっともわからんというところなんです」

銀座のクラブのママでもある(本人インスタより)

 水谷氏が彼女の発言を知ったのは、7月5日の深夜。これまで世話をしてきた子供が、こんな発言をしている人がいると知らせてきた。

 そして水谷氏は河西氏を名誉毀損で訴えることを決めたという。

「私自身はビクともしません。ただ私のところでリストカットや薬物をやめようと頑張っている子たちの動揺がひどい。うちの事務所はそういう子供たちの相談を受けている場所なので、これで子供たちが相談できなくなったら、その子たちの命に関わる。だから訴えることにしました」

河西氏「水谷さん?という方は知りません」

 河西氏に本当に水谷氏による“押し倒し”があったのか尋ねると、こう回答があった。

「夜回り先生とは言いましたが、本人がそのように語っていて水谷さん?という方は知りませんし私はその方の名前出してません。知らないのですから。夜回り先生とはその人を指すことになりません。現在、顧問弁護士と相談して同じ回答です。もし勝手に記事に書かれた場合こちらも法的措置を取ります」

 つまり、声を掛けてきた人間が「夜回り先生」と名乗っていただけであり、水谷氏のことは知らず、演説で名前も出しておらず、自分が発言した「夜回り先生」が水谷氏のことを指しているわけではない、というのだ。

高校教諭時代の水谷氏 ©共同通信社

 一方、水谷氏は、

「それは多分裁判では通用しないでしょう。『夜回り先生』と呼ばれているのは僕しかおらず、“夜回り先生”水谷修としてテレビにも出ていますし、本も何冊も出版している。こちらは淡々と裁判にしようと思っています。7月19日に東京地裁に訴状を提出する予定です」

 件の河西氏の演説は、同党から比例区で出馬した工学者の武田邦彦氏の名前を取った「武田邦彦の声」というユーチューブチャンネルで13日現在も配信されている。

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source : 週刊文春 電子版オリジナル