人生の3分の2は歴史のことを考えてきた。

 そんな僕によく投げかけられるのが、「歴史を好きになったきっかけは何ですか」という質問。これは、もう何度も同じ答えを繰り返しているのだが、小学校3年生のときに見た歴史ドラマ「関ヶ原」(TBS系、1981年正月放送)がきっかけだ。

 このドラマは司馬遼太郎の原作で、関ヶ原の戦いで徳川家康(演・森繁久彌)に立ち向かう石田三成(演・加藤剛)を主人公にした、5時間半を超える超大型歴史劇。知る人ぞ知る名作である。主演の二人以外にも、豊臣秀吉(演・宇野重吉)、島左近(演・三船敏郎)、本多正信(演・三國連太郎)と、当時考えうる最高に豪華な俳優陣による配役で、僕と同世代には、このドラマを見て歴史好きになったという人はけっこう多い。

 この番組のお正月三夜連続放送を、僕は炬燵(こたつ)に入って、歴史好きだった父の横で見ていた。もちろん小学生なので、細かい話は分からなかったはずなのだが、とにかく「すごいものを見た」という印象だけは残っている。しかも、「これは400年前に実際にあった話だ」という父の解説に衝撃をうけ、その後、学校の図書室で戦国関係の本を拾い読みした。すると、善玉だと思っていた三成が本によっては悪玉に、悪玉のはずの家康が善玉に描かれていたりする。「これはいったい何だ?」という疑問が、たぶん歴史というものを考えた最初の経験だと思う。

 そんなわけで、僕はこのドラマがVHSビデオになったときにすぐ買って、DVDになったときもすぐ買って、何度となく視聴して、いまではほとんどのセリフを覚えてしまっている(たまに思いついては、一人「関ヶ原」名場面再現をして、家族から気味悪がられたりしている)。いま見てもドラマとして良く出来ているだけでなく、当時の人間模様が分かりやすく整理されていて、入門者向けの歴史ドラマとして極上の作品だと思う(未見の方は是非ご覧を)。

 ただ、これをウチに遊びにきた学生などに見せると、悲しいことに、あまり反応がよろしくない。とくにBGMがメロドラマ調で、古臭く感じるらしい。あとは、俳優が過去の人たちばかりなので、あまり親近感を覚えないようだ。「なんでこの良さが分からないんだ!」と説得を試みたこともあったが、最近では、もうこれは仕方のないことなのかな、と思うようにしている。

 よく年配の歴史ファンほど「最近の歴史ドラマはいいかげんだから……」とボヤく人がいるが、それは偏見だ。僕が見たところ、歴史ドラマの時代考証は、どれも昔に比べて格段に正確になってきている。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題
コメント機能も使えます

週刊文春電子版に超おトクな3年プラン59,400円が登場!月額プラン36ヵ月分と比べて19,800円、年額プラン3年分と比べて6,600円おトク!期間限定12月2日(月)まで!

キャンペーン終了まで

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

  • 3年プラン

    59,400円一括払い、3年更新

    1,650円/月

    オススメ!期間限定

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2022年7月21日号