歴史ドラマの現実味|清水克行

室町ワンダーランド 第12回

清水 克行
ライフ 歴史

 人生の3分の2は歴史のことを考えてきた。

 そんな僕によく投げかけられるのが、「歴史を好きになったきっかけは何ですか」という質問。これは、もう何度も同じ答えを繰り返しているのだが、小学校3年生のときに見た歴史ドラマ「関ヶ原」(TBS系、1981年正月放送)がきっかけだ。

 このドラマは司馬遼太郎の原作で、関ヶ原の戦いで徳川家康(演・森繁久彌)に立ち向かう石田三成(演・加藤剛)を主人公にした、5時間半を超える超大型歴史劇。知る人ぞ知る名作である。主演の二人以外にも、豊臣秀吉(演・宇野重吉)、島左近(演・三船敏郎)、本多正信(演・三國連太郎)と、当時考えうる最高に豪華な俳優陣による配役で、僕と同世代には、このドラマを見て歴史好きになったという人はけっこう多い。

 この番組のお正月三夜連続放送を、僕は炬燵(こたつ)に入って、歴史好きだった父の横で見ていた。もちろん小学生なので、細かい話は分からなかったはずなのだが、とにかく「すごいものを見た」という印象だけは残っている。しかも、「これは400年前に実際にあった話だ」という父の解説に衝撃をうけ、その後、学校の図書室で戦国関係の本を拾い読みした。すると、善玉だと思っていた三成が本によっては悪玉に、悪玉のはずの家康が善玉に描かれていたりする。「これはいったい何だ?」という疑問が、たぶん歴史というものを考えた最初の経験だと思う。

 そんなわけで、僕はこのドラマがVHSビデオになったときにすぐ買って、DVDになったときもすぐ買って、何度となく視聴して、いまではほとんどのセリフを覚えてしまっている(たまに思いついては、一人「関ヶ原」名場面再現をして、家族から気味悪がられたりしている)。いま見てもドラマとして良く出来ているだけでなく、当時の人間模様が分かりやすく整理されていて、入門者向けの歴史ドラマとして極上の作品だと思う(未見の方は是非ご覧を)。

 ただ、これをウチに遊びにきた学生などに見せると、悲しいことに、あまり反応がよろしくない。とくにBGMがメロドラマ調で、古臭く感じるらしい。あとは、俳優が過去の人たちばかりなので、あまり親近感を覚えないようだ。「なんでこの良さが分からないんだ!」と説得を試みたこともあったが、最近では、もうこれは仕方のないことなのかな、と思うようにしている。

 よく年配の歴史ファンほど「最近の歴史ドラマはいいかげんだから……」とボヤく人がいるが、それは偏見だ。僕が見たところ、歴史ドラマの時代考証は、どれも昔に比べて格段に正確になってきている。

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source : 週刊文春 2022年7月21日号

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