教員をやっていると、すこし前までは、よく教え子の結婚式に呼ばれた。ただ、「地味婚」ブームもすっかり定着して、さらにそれにコロナが追い打ちをかけて、「恩師」や親族一同を招いての大規模な披露宴というのは、最近、ほとんど見られなくなってしまった。

 多少のご祝儀の出費に目をつぶれば、数年間とはいえ同じ時間を過ごした学生の人生の晴れ舞台に立ち会えるというのは、教師冥利に尽きる。精一杯のおめかしをして、ジューンブライド(6月の花嫁)に憧れる女の子の気持ちもよく分かる。ヨーロッパでは、「6月の花嫁」は幸せになれる、という俗信があるのだそうだ。

 そんな幸せ気分に水を差すようで大変恐縮なのだが、今回は日本では逆に「6月の花嫁」は忌み嫌われた、という少し不穏なお話(今回の話、6月に合わせて書くつもりだったのだが、ぼ~っとしてたら完全に7月になってしまった……。やや季節外れなのも、重ね重ねご容赦を)。あまり知られていない話だと思うのだが、日本の前近代社会では、旧暦5月(現在の新暦なら6月)は、ジューンブライドどころか、「結婚してはいけない月」とされていたのだ。

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source : 週刊文春 2022年7月28日号