「今日は、アメリカの女性にとって暗黒の日です」
6月24日、ビリー・アイリッシュがコンサートで言った。その日、連邦最高裁が人工中絶の権利を憲法で守らないと判断したのだ。
中絶を罪と考える保守的なキリスト教徒が多い南部や中西部の州では、かつて州法で中絶が禁じられていた。しかし1973年、連邦最高裁が中絶は女性の権利であると判決し、合法になった。それ以来、保守的キリスト教徒はその最高裁判決を覆すことを悲願としてきた。
最高裁は9人の判事の多数決で違憲・合憲を判断するが、判事を任命できるのは大統領だけ。そのチャンスは判事が死ぬか引退するかで欠員が出た時のみ。共和党はキリスト教保守派の支持を受けてキリスト教保守派を判事に任命しようと、民主党はそれを阻止せんとし、攻防は約50年続いたが、ドナルド・トランプが大統領任期中に3人の判事を任命したので、判事9人中6人をキリスト教保守派が占め、この判決になった。
「怖ろしいです」テイラー・スウィフトはツイートした。「人々は女性の権利のために何十年も戦ってきたのに」
この最高裁判決は、中絶について各州に任せるので、テキサスやミシシッピなど、既に州法になった州で中絶禁止が実施される。さらに11の共和党州がこれに続く。州議会の多数派と州知事の座を共和党が握る計26州で禁止になる見込みだ。
「その州の女性たちはレイプ犯の子どもを産まされることになる」
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source : 週刊文春 2022年7月21日号