元共同通信社編集局長で「報道ステーション」(テレ朝系)のコメンテーターも務めた後藤謙次氏(72)。永田町取材歴40年の政治ジャーナリストの目に、安倍氏はどう映っていたのか。
共同通信政治部で竹下派の番記者だった頃、「安竹関係」と呼ばれて親しかった安倍晋太郎さんと竹下登さんのゴルフに取材に行くと、秘書官として随行していたのが安倍さんだった。清和会の古い番記者からは「晋ちゃん」と親しまれ、その頃からお坊ちゃん気質の人の好さがあった。
関わりを深めたのは安倍さんが小泉政権で官房長官を務めていた頃。当時は北朝鮮への渡航自粛要請が出ていたが、共同通信が平壌支局を開設することになり、編集局長だった私が安倍さんに事前通告しに行った。安倍さんは対北朝鮮強硬派で、嫌味の一つでも言われることも想定していた。ところが「報道機関なんだから、きちっとした情報を発信してくださいよ」と、拍子抜けするほど真っ当な返事をいただけた。
「報道ステーション」では安倍政権に対して批判的な物言いもした。森友問題や閣僚の不祥事を受けて「政治自体が上から目線、そして権力をもっている人たちのおごりというのが今回、端的に表れた」「今の政権はタガが緩んだのではなくタガが外れている」と言ったことも。しかし、安倍さんからクレームが来たことは一度もなかった。
安倍さんは事あるごとに「後藤さんは経世会だから」と言って牽制するものの、サービス精神旺盛で、聞けばなんでも答えてくれた。携帯の番号を変えた時も、安倍さんの方から電話してきて「警備上危ないから変えろと周囲が言うんで」と、理由まで教えてくれる。着信履歴を残しておけば、時には嫌なことを聞かれるとわかっていても、必ず折り返しの連絡をくれた。
政治家として特にこだわっていたのは内閣支持率で、「支持率が高いと政策を前に進められる。政策が進むと人が集まってくる」と語っていた。イギリスのメイ首相には「大統領は敵対する野党から、議院内閣制の首相は党内から引きずり降ろされる」とも話しており、だから明確なナンバー2を作らなかったのだろう。
一方で、祖父・岸信介と父・晋太郎さんへの思いの強さは常に感じられた。一番すごいと思ったのは、首相官邸の執務室の棚に、岸とアイゼンハワーのツーショット写真が飾られていたこと。毎日、祖父の写真を見ながら、自分の政策をやろうと決意していたのだろう。また議員会館の事務所には、外交ブレーンだった岡崎久彦氏が贈った「父子三代憂國情遂顯集團自衛義」という書も飾られていた。
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source : 週刊文春 2022年7月21日号