「要人警護は結果が全て。無事に終われば100点ですが、最悪の結果となった今回は0点で、警察の失態と言える。次の失敗を防ぐためにも徹底的な検証が必要です」

 こう語るのは、東京五輪でチーフ・セキュリティ・オフィサーとして危機管理のトップを務めた米村敏朗元警視総監(71)だ。安倍氏への銃撃を許した警備の「5つの失態」とは――。

元警視総監の米村氏

 警察庁関係者が語る。

「山上徹也容疑者は犯行前日に訪れた岡山の演説会場について『武器を持って近づけなかった』と供述している。つまり、奈良の警備の甘さが銃撃を決断させたのです。県警の鬼塚友章本部長は、首相が外遊する際の警護を担う警察庁警護室長を務め、2017年のトランプ大統領(当時)来日の警備にも携わった警備畑のエリート。それだけに警察内部では驚きの声が上がっています」

 鬼塚本部長は会見で、警護計画書を「違和感や修正すべき点を感じず、原案通り承認した」と明かした。

会見で頭を下げる奈良県警の鬼塚本部長

「現場には警視庁警護課のSPも随行していた。SPは現職の首相だけでなく、首相経験者や現職閣僚が遊説などをする際にも同行する。オウム真理教元幹部の死刑を命じた上川陽子元法相には例外的に4人のSPが付きますが、元首相に随行するのは現職閣僚や自民党幹部と同じく一人だけ。ただ、当日は奈良県警本部の警護員や所轄の警察官が数十人規模で動員されており、人員が不足していたわけではない」(社会部記者)

 では、何が凶行を招いたのか。1つ目に挙げられるのが演説場所の選定である。鬼塚本部長は会見で、現場の大和西大寺駅前についてこう語っていた。

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source : 週刊文春 2022年7月21日号