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安倍晋三元首相暗殺 暴力の連鎖の分かれ目

編集部コラム 第67回

「週刊文春」編集長

編集部コラム

ニュース 政治

 今週号は、特集ページをすべて安倍晋三元首相の暗殺事件に関する記事としました。「週刊文春」としては前代未聞のことです。歴代最長の政権を率いた元首相が、応援演説中に殺害される。日本の歴史に残る事件と考え、「週刊文春」編集部の総力をあげて徹底取材しました。

 中でも衝撃的だったのは、狙撃犯・山上徹也容疑者の人生をたどった右トップの記事です。母が、統一協会(2015年に世界平和統一家庭連合に改称)に入信したことで、家族が崩壊していく経緯を、伯父が150分にわたって告白してくれました。話を聞いたのは、事件取材のプロ・M記者。他メディアが取材を拒否される中、これだけ長時間、話を聞けたのは、M記者の人間力と言うしかありません。

 今回の記事を読むと、山上容疑者の人生は「壮絶」の一言に尽きます。同情の余地はあります。ただ、だからと言って、彼の犯行を許容することはできません。

 事件後、一部で次のような言説が広がっています。

「安倍元首相を誰が殺したかは重要ではない。安倍氏なら批判してもいい、殺されてもいいという空気を作り出したメディアや識者こそが引き起こした」

 実は、政治家に対する物理的な攻撃は、最近続いていました。今年3月には男が、立憲民主党の辻元清美氏の事務所の窓ガラスや壁を破壊しました。また、参院選中に、事務所のベランダに生卵が投げつけられたとも明かしています。同じく参院選期間には、NHK党の立花孝志党首の演説中に、街宣車にスプレー塗料を噴射する事件が起きています。二人とも、毀誉褒貶があり、メディアで批判されてきた人物です。これらの事件に、厳しい批判は起こりませんでした。辻元氏の生卵事件を巡っては、「自作自演説」が飛び交い、ツイッターのトレンド入りしたほどです。

 私は、言論によるファクトに基づいた批判と、物理的な攻撃の間には大きな差があり、厳しく峻別する必要があると思っています。右、左を問わず、暴力行為は大小を問わず厳しく糾弾する。その意味で、山上容疑者がどんな不幸な境遇にあったにせよ、安倍元首相の殺害は決して許されないと考えます。

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source : 週刊文春

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