俳句というのは、ぼくらみたいな言葉を仕事にしている人間が、死ぬギリギリまで、最後までできる文芸形式だと思うんです。

 もともと種田山頭火や尾崎放哉の自由律俳句に惹かれていました。その流れをくんでいるのが、渥美清。風天という俳号で詠んでいます。特に好きなのは、〈ゆうべの台風どこに居たちょうちょ〉〈赤とんぼじっとしたまま明日どうする〉。いい句でしょう。ただ、俳句は短すぎて手に負えないから、自分でやろうとまでは考えていませんでした。

渥美清も俳句を嗜んだ

 それが、「こういうのを俺はやりたいんだよォー」と思ったのは、15年ほど前。金子兜太さんの句を俳句好きの編集者から教えてもらったのが、きっかけでした。

〈おおかみに螢が一つ付いていた〉

〈梅咲いて庭中に青鮫が来ている〉

 すげぇなと、ぶったまげましたね。

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source : 週刊文春 2022年8月18日・25日号