「センチメンタル・ジャーニー」を皮切りに花の82年組全員の曲を名アレンジで彩った鷺巣氏。疾風怒濤の“勝負の日々”を振り返る。
当時は歌謡曲、ニューミュージック、演歌が三つ巴で音楽業界を支え、その中心にレコード大賞などの賞レースがありました。今となっては信じられませんが、賞を獲るため勝負曲となるシングルを3カ月に1枚出していた時代です。僕は業界最高峰である筒美京平さんに認めていただき、松本伊代のデビュー曲「センチメンタル・ジャーニー」を編曲することになりました。彼女と初めて会ったのは81年の夏で、僕はまだ23歳。いわば駆け出しの若造に大事なデビュー曲を託していただけた。非常にありがたかったですが、とても緊張しました。
大衆の耳を掴めるよう心血注いだイントロも思い出深いですが、“3回もの録音”はまさにあの時代ならではでした。1回目はキーをC(ハ長調)で録ったのですが、歌ってみると彼女の持ち味である中低音の良さが出ず、プロデューサーの飯田久彦さんの提案で半音下げてもう1回録ることにしたのです。今ならコンピュータで数分でできる作業ですが、当時は再びスタジオ、ミュージシャン、オーケストラを全ておさえてゼロからレコーディングしなければなりませんでした。さらにCMタイアップが決まり、15秒や30秒サイズで再々録音。その曲がオリコンチャートに初登場で入ると、途端に仕事発注の電話が鳴り止まなくなりました。歌謡曲やニューミュージックの仕事をするうえで「センチメンタル・ジャーニー」は鷺巣にとってもデビュー曲のようなものだったのです。
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source : 週刊文春 2022年8月18日・25日号