「各国首脳と信頼関係を築く能力は傑出していた。米国のトランプ前大統領だけでなく、英国のメイ元首相、豪州のアボット元首相とは親友中の親友。『自由で開かれたインド太平洋』も世界中で受け入れられた。世界史に名を残す総理です」

 こう話すのは、第2次安倍政権で内閣官房副長官補を務めた兼原信克氏だ。

 国際社会での日本のプレゼンスを高めることを常に意識していた安倍氏。そこで力を入れたのが、外遊先での演説だ。安倍氏のスピーチライターで、『安倍総理のスピーチ』著者、谷口智彦元内閣官房参与が言う。

「自ら原稿の構成に手を入れることもありました。14年7月に豪州の国会両院総会で行った演説では、豪州の対日遺恨を象徴する地、ココダとサンダカンに触れました。私の元原稿では中盤で言及していましたが、『聴衆の関心を呼ばないといけない部分だから』と冒頭に持ってきたのです」

 谷口氏が「安倍氏一世一代の演説」と振り返るのが、15年4月、日本の首相として初めて行った米議会上下両院合同会議でのスピーチ。「私たちの同盟を『希望の同盟』と呼びましょう」と訴えたのだ。

「『希望の同盟』は、安倍さん自ら考え出し、拘(こだわ)った文言です。戦後70年の節目に従来の日米同盟を一新し、未来にベクトルを向けようとしたのでしょう。演説後、米議員が、配られた原稿を持って『サインをしてくれ』と殺到したほどです。昭恵夫人は安倍さんの没後も、私を見ると『あの演説の時は毎日毎日が練習で』と、しみじみそう振り返っていました」(同前)

 そんな安倍氏の真骨頂こそ、テタテ(通訳のみの会談)、すなわち“サシ”での交渉だった。元外務次官の藪中三十二氏が言う。

「安倍さんの持ち味は律義さ。第一次政権最後のインド訪問でも、腹痛を抱える中で振舞われたカレーを平らげた。そういう姿勢は相手国に伝わるものです」

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source : 週刊文春 2022年10月6日号