泣かせる役者、というのがいる。悲劇がうまいとか哀愁漂うというのではなくて、その人を見てると何か可笑しくて失笑したりしてしまうのだが笑ってるうちにじわっと物悲しくなってくるというような……ワキでチラッと「もの悲しさ」を見せることでそのドラマがグッとコクを増すような。
そういう俳優の筆頭が、仲野太賀だと思ってるのです。仲野太賀が出てると、どうでもいいようなトンチキな場面でも涙がこみあげそうになる。仲野太賀がダメ男やクズ男であればあるほど、「こんなクズにも哀しさがある……」と胸を衝かれる。そういう描写があるわけではないのに! テレビじゃないが、映画『あの頃。』の仲野太賀は忘れられん。困った男の仲野太賀が最後病気で死ぬんですが、この世でいちばん泣かせる「困った死に男」は仲野太賀だと思わせた。
そんな仲野さんに、主役のドラマがドンと来た、『拾われた男』。
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source : 週刊文春 2022年11月3日号