人生は後悔の連続だ。大学教師のころ、もっと尊敬されてもおかしくなかった。大学教員は尊敬されやすい立場だ。それなのに、気取らない性格だとはいえ、軽んじられたのはなぜなのか。
ああ言えばよかったと思うことが多すぎる。あるとき哲学の研究発表大会を開くことになり、学生が立看板を作っていた。看板がないと「ツチヤを糾弾する会」なのか「持続化給付金で儲ける強欲セミナー」なのか不明だ。学生が毛筆で書いた看板の字は目を覆いたくなるほど下手だ。これでは他大学に笑われる。わたしがいるではないか。ふだん黒板に書くのを見ているから実力は知っているはずだ。見るに見かねて学生に言った。
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source : 週刊文春 2022年12月15日号