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ライザップグループは今年1月、本社を移転し、都内にあるグループ会社を集約しました。ONE RIZAPとして各社の持つ専門性を有機的に結び付け、どうお客様に喜んでいただくか。ビジョンや方向性を共有して、グループ一丸となって歩みを進めていきたいと考えています。そのヒントになったのが『パーセプション 市場をつくる新発想』(本田哲也 日経BP 1800円+税)。本書はPR戦略の専門家である著者が、モノやサービスを売るために必要な「パーセプション=客観的な認識」の重要性を論じています。ブランドや商品について「みんなが知っている」という単なる認知だけでは足りず、「お客様の目に自分たちがどう映っているか」が重要だという指摘は、顧客起点でビジネスを進めていくために不可欠な姿勢です。
一方で、社内のメンバーの認識を合わせることの意義についても言及されています。一例として、社員の働き方や仕事内容を紹介するデジタル社員名鑑を作成し、公開しているNTTデータの取り組みが紹介されています。内容が社外からも見られるようになっていることで社員が自らのキャリアを真剣に考えるきっかけになるそうです。確かに、発信が外部からの目線にさらされることで、自己認識も深まり、自社のコアとなる理念とより真剣に向き合う機会も生まれるはずです。
ライザップが成功したのも社員やスタッフがサービスの軸となる「認識」を一致させていたからだと言えます。創業当初から、とても誇りに思っていたのが、社外の方から「ライザップの社員と話していると、社長と話しているみたいだ」とたびたび言っていただけたこと。「人は変われる」という理念をメンバーと共有できている証拠だと感じたからです。
ブランドは小手先のマニュアルのような手段ではなく、目的に向かう熱さや一貫性から生まれるものです。理念・目的を共有することによって、お客様と向き合う手段が統一されていったのです。当時は、毎月すべてのトレーナーを全国から集め、トレーナーの一人に密着したドキュメンタリー動画を見てもらっていました。我々の目指すところという意味で「ポールスター(北極星)」というタイトルをつけましたが、大事にしていたのはテクニックやノウハウではなく、各自がどんな思いを持って仕事に取り組んでいるかにフォーカスすること。トレーナーたちはお客様と向き合う中で同じような葛藤や苦悩に直面していることもあり、時には映像を見て感動したメンバーから嗚咽が聞こえてくることもありました。
そうした取り組みに絶対の自信を持っていたんです。全員が同じビジョンを共有している以上、誰が担当したとしても、同じ品質のサービスを提供できると確信していました。だから、私の知人がライザップに入会してくれた時も、トレーナーを指名するということは一切しませんでした。
「ポールスター」は5年以上にわたって実施し、ライザップの土台を作った取り組みであったと思います。現在は休止中ですが、理念を共有し、ONE RIZAPを推進していくためにも、復活させようと考えています。
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source : 週刊文春 2023年2月9日号