フィリピンやベトナム、インドネシアから来る彼ら彼女らがいなくては、日本の介護現場はもはや成り立たない。そこで本人たちに話を聞くと、賃金、労働時間、仕事への向き合い方をめぐり、生々しい証言が次々と――。

 茶色の髪を後ろに束ね、明るい水色のダウンジャケットを羽織ったレイナ(仮名)と大阪の貸会議室で会ったのは今年2月3日のこと。約束の時間に現れたレイナに、「日本は長いんですか?」と聞いてみると、彼女は両手の指で6を表しながら、「ロクガツ」と短く答えた。

 昨年6月、大学生になった娘をフィリピンに残して来日したレイナは35歳。たどたどしい日本語を話す彼女の横には、同じフィリピン人のソフィア(仮名・45)、マイカ(仮名・38)、ニコル(仮名・45)が座った。この3人は日本滞在歴が長いため、日本語が不自由なレイナの通訳係を買って出てくれた。彼女たち4人は現在、大阪市の介護施設で働いている。

 この連載では前回(2月9日号)、日本の介護施設の多くが人手不足であることについて触れた。状況は年々悪化するばかりで、厚労省は2025年度に全国の介護職が32万人足りなくなると推計している。さらに40年度には、69万人が不足すると見込まれており、外国人に頼らざるを得ない状況だ。

 たとえば私が昨年取材した介護施設では、スタッフの4分の1がインドネシアやベトナム、フィリピンから来たスタッフだった。

外国人介護職(本文の証言者とは無関係)

「厚生労働白書」(令和4年版)によると、日本には「医療・福祉」の分野で働く外国人が約5万8000人いる。日本で就労する外国人労働者全体に占める割合は3.3%と低いものの、前年比では33%も増加している。産業別にみると、前年比で最も増えている業種が、「医療・福祉」だ。

 白書では、今後増加が見込まれる外国人労働者の職場定着についても言及しており、職場環境の整備が重要だと記している。

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source : 週刊文春 2023年3月2日号