育成出身選手で初めて日本シリーズMVPに輝いた、侍の扇の要。“甲斐キャノン”の成長を支えたのは、今も忘れない大切な言葉だった。
(甲斐拓也 Takuya Kai 1992年11月5日生まれ。2011年に育成ドラフト6位で福岡ソフトバンクホークスに入団。昨季は6年連続6度目のゴールデン・グラブ賞と、2年ぶり3度目のベストナインを受賞)
2008年11月、大分・楊志館高校野球部の部室ではミーティングが行われていた。だが――、そこにいる誰もが、言葉を失っていた。1冊の野球ノートが部員たちの間で回覧され、嗚咽が漏れ聞こえる。1年生の甲斐拓也もそのノートを読み始めると、肩を震わせ、溢れる涙を止めることはできなかった。甲斐の2学年上でマネージャーを務めていた大﨑耀子(あきこ)さんが、上咽頭がんのために亡くなって数日後のことだった。
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source : 週刊文春 2023年3月16日号