昨年、広島から世界の舞台へと飛び出した走攻守三拍子揃ったメジャーリーガー。 “神ってる男”覚醒の裏にあった今も忘れぬ屈辱の一戦を関係者の証言で振り返る。

 

(鈴木誠也 Seiya Suzuki 1994年8月18日生まれ。13年に広島東洋カープに入団。6年連続ベストナイン選出。ゴールデングラブ賞も5回受賞している。22年、日本人野手として史上最高額(当時)でシカゴ・カブスに移籍)

昨季カブスでの打率は2割6分/撮影 田口有史

 2014年10月12日、広島対阪神の顔合わせとなったクライマックスシリーズ・ファーストステージの第2戦。前日に敗北を喫していたリーグ3位の広島は、この日勝たなければステージ敗退が決まる瀬戸際に立っていた。最大のチャンスは、0対0で迎えた7回表。一死満塁で打順が回ってきた高卒2年目の鈴木誠也は、その3球目を振り抜いた――。

 東京都荒川区で生まれ、小学3年生から野球を始めた鈴木誠也。その才能が開花したのは、二松学舎大学附属高校時代だった。硬式野球部の市原勝人監督が当時を振り返る。

「身長が180センチ程あって大柄でしたが、見た目とは裏腹に俊敏な選手でした。走れば二塁まで7秒台で到達し、投げれば最速140キロを計測、それに加えライナー性の打球を120メートル飛ばす、と全てにおいてスピード感が桁違いでした」

 当時から肩が強く、高校時代は主に投手としてプレーをしていた鈴木。だが、光っていたのはそのバッティングスキルだったという。

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source : 週刊文春 2023年3月9日号