栗山英樹監督(61)は、いかにして日本を悲願の優勝へと導いたのか。現地で取材を続けた鷲田康氏による「野球の言葉学」特別編。

世界一に導いた栗山監督

 米国との決勝戦は大谷翔平投手(28)がクローザーで登板。ロサンゼルス・エンゼルスのチームメイト、マイク・トラウト外野手を空振り三振に仕留め、劇的な幕切れとなった。その大谷に繋ぐセットアッパーとして8回のマウンドに上がったのが、チーム最年長のダルビッシュ有投手(36)だった。

「とにかく勝った状態で(大谷にバトンを)渡したかった。それだけ考えてマウンドに上がりました」

人知れず苦悩していたダルビッシュ

 ダルビッシュは本塁打で1点差とされたが、後続を断って大谷に勝利のバトンを渡した。優勝後のグラウンドでは、年下の投手たちと笑顔で記念撮影。サンディエゴの自宅から観戦に駆けつけた、聖子夫人とキスを交わす姿も印象的だった。そんな喜びの中で気になったのが、シャンパンファイト後の囲み取材での表情だ。

「優勝したことよりアメリカに勝ったことが嬉しかった。泣くかなと思ったけれど、それはなかった」

 淡々と語ったダルビッシュは、「いま一番やりたいことは?」という問いかけにこう答えたのである。

 先発がしたいです――。

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source : 週刊文春 2023年4月6日号