コロナ禍が始まった2020年、接触8割減を提案した「8割おじさん」こと西浦教授。今では世間は収束したかのようなムードだが、今後どうなっていくのだろうか。この3年間で得た知見をもとに、池上彰氏と語り尽くす。
池上 新型コロナウイルスの感染者数は、今年に入って減少傾向です。世の中には「ようやく収まったんだね。ああ、よかった」と浮かれたムードもあります。
西浦 いえ、コロナは終息していません。今後も再感染や、未感染の高齢者などが初めて自然感染するような流行を繰り返し、徐々に先細りしながら常在化していきます。ヨーロッパやアメリカなど常在化のプロセスに入っている国々と行き来する環境に戻った以上、日本でも常在化させる以外に選択肢がないんです。
池上 いわゆるウィズ・コロナですね。
西浦 日本の免疫状態を献血などのデータから見ると、英国の去年2月くらいに相当します。英国はその後、大きな感染の波を3、4回経験して、常在化に移るまでの間に多くの高齢者が亡くなっているんです。必ず同じ道を辿るとは言えませんが、日本にもリスクはあるわけです。
池上 マスクの着用について、3月13日から個人の判断に委ねられました。
西浦 着用の緩和は、ひとつの失敗だと思っています。予防効果が証明されていますし、日本人の免疫状態はマスクの着用が求められている段階です。また、マスクを着用することで、経済が痛むといったマイナスがない、つまりトレードオフがない。なのに、なぜ、ここで自ら捨てるのか。僕は専門家の会合でも、「オペレーションをやっている人たちが、カッコつけたいだけじゃないですか」と、叫ぶように反対意見を言わせていただきました。
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source : 週刊文春 2023年5月4日・11日号