タイガースと並び称されるテンプターズだが、萩原健一は早く解散したかったという。自伝『ショーケン』の構成を担当し、37時間半、インタビューした赤坂英一氏が、ショーケンのテンプターズに対する胸中を明かす。

 

(あかさかえいいち/スポーツライター。1963年、広島県生まれ。法政大卒。2002年、『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』でデビュー。『失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち』が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他著に『すごい!広島カープ』『2番打者論』など。)

赤坂英一氏

「テンプターズは、まるでお人形さんみたいなグループだったのが、とてもイヤだった。『エメラルドの伝説』も『神様お願い!』もヒットして、名曲だと人は言うし、有名にもなれたけど、俺は決して好きじゃなかった」

2019年に亡くなった萩原健一

 萩原健一さんが複雑な表情で振り返ったのは2006年冬、自伝『ショーケン』(講談社刊)の構成のため、私が聞き取りを始めた頃だった。場所は個人事務所〈アルマンス〉が借りていた目黒の小さなビルの1室。恐喝未遂事件で有罪となり、執行猶予期間中の身で、一切の芸能活動を休止していたスターの意外な告白に、少なからず驚かされた。

自伝『ショーケン』は2008年3月刊

 ザ・テンプターズは1967〜70年、ザ・タイガース、ザ・スパイダースとともにグループサウンズ(GS)のスターとして一世を風靡したバンドである。シングルレコード12枚、アルバム6枚を出し、ボーカルのショーケンを一躍全国区のスターへと押し上げた。しかし、自ら望んでテンプターズに入ったわけではなかった、とショーケンは言う。

「テンプターズはアマチュアの頃、朝鮮高校(東京朝鮮中高級学校)の番長がダンスホールで主催するパーティーのステージに出てたんだ。ボーカルが女でさ、生理痛がキツくて歌えないだとか、よくワガママ言って休むんだって。で、番長から俺に『代わりに歌ってくれ』って話がきたのよ」

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source : 週刊文春 2023年5月4日・11日号