このところ日経平均株価が急上昇。3万円台を回復し、バブル後の最高値と報じられています。そんなに日本の景気がよくなっている実感がない人も多いでしょうが、なぜ株価が上昇しているのでしょうか。そこには三つの要因が考えられます。
ひとつは中国株に投資していた海外の投資家が日本株の購入に方針を変えたからと言われています。
いまの中国は、習近平国家主席になってから、企業活動への締め付けが厳しくなっています。経済政策も共産党の思惑で急に変わってしまうことがあり、安心して投資できないというのです。アステラス製薬の社員がスパイ容疑で拘束される事件も起きました。外国の企業からすると、うっかり社員を派遣すると捕まってしまうかもしれないという恐怖があります。そんなリスクを冒すくらいならと、近くの日本への投資に切り替え、日本株を買うようになっているというのです。
2つ目の理由は、円安です。日本は日銀総裁が交代しても金融緩和の方針に変化がありません。金利が上がりませんから、日米の金利差は広がったまま。結果として円安が続いています。このためドルベースで見ると、日本の株価はとても割安に見えます。「優良企業の株が、こんなに安く買えるなら買っておこう」という動きが出ているのです。
そして3つ目はPBRが1倍を切る企業が、株価引き上げに必死になっているからです。東京証券取引所は今年3月、プライム市場とスタンダード市場に上場している企業に対し、「市場から高く評価されるような具体策を明らかにしろ」と要求しました。その中心は、PBRをなんとかしろということです。
さて、PBRという専門用語が登場しました。今回は、これを詳しく説明しましょう。
PBRとは、Price Book-value Ratioの略で、日本語にすると「株価純資産倍率」。その会社の株価が、会社が持っている純資産に比べて高いか低いかを判断する数値です。
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source : 週刊文春 2023年6月8日号