最終回 最後の自筆メモ

加藤暠 “仕手の本尊”と呼ばれた男

西﨑 伸彦
ニュース 社会 政治 経済

「もう株はやらない」。加藤にそう決意させた1冊の訳書があった。だが兜町に別れを告げた男に再び検察が――。

 

「残りの人生は短いかもしれないが、1000億円を溜めて社会に還元したい」

 2010年秋、糖尿病が悪化し、医師から透析治療を勧められた加藤暠(あきら)は、大学時代の友人らに、こんな言葉を漏らした。だが、人工透析を拒否したことで、せん妄状態に陥り、悪夢のような日々が続くことになる。

 加藤の長男、恭(たかし)が語る。

「東日本大震災で、自宅の仏壇がひっくり返ってしまったことにショックを受け、より深刻な病状が現れるようになりました。突然怒鳴り始めたり、深夜に起き出して、『(株の)買い注文を出せ』と大騒ぎしたり、『お前が東大に行ったのが悪い』と支離滅裂なことを口にするようになった」

 その後、家族3人は東京を離れ、広島へと向かった。地元の病院で透析治療を始める予定だったが、加藤は鉄製の靴ベラを振り回して抵抗。家族も手を焼き、閉鎖病棟のある精神科病院に措置入院させることになった。

 ところが、加藤は入院の手続きをしている妻、幸子(ゆきこ)の姿をみて、翌日面会に訪れた実姉にこう訴えたという。

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source : 週刊文春 2023年7月20日号

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