バブル崩壊後も兜町で復活と転落を繰り返した加藤。相次いで訴訟を起こされ、実姉の元には暴力団関係者が……。
〈野中の一本杉は、万人弱気の中で、大踏み上げ相場によって展開されることは、いわば歴史的必然です〉
1995年5月、投資勉強会「新しい風の会」を立ち上げた加藤暠(あきら)は、ダイヤルQ²サービスを使った音声メッセージでこう語りかけた。“野中の一本杉”とは、下落相場のなかで、唯一逆行高を続ける銘柄を指す。
〈兼松日産農林の株価は、そうした個人投資家の夢と希望をいっぱいに背負いながら、再び天高く、力強く飛翔しようとしている〉
加藤が推奨した兼松日産農林は、当時マッチ製造の老舗として知られた。95年3月に389円の安値だった“マッチ”の株価は、途中売りを吸収しながら翌年7月には5310円の最高値をつけた。稀にみる出世株の出現に、投資家は競って飛びつき、伝説の仕手戦は悲喜こもごものドラマを生んだ。
日本経済新聞は、96年1月31日付の匿名コラム「大機小機」で、「加藤暠氏に問う」と題し、過熱する仕手株人気にこう冷や水を浴びせた。
〈賢明なあなたのことですから、二度と失敗しないように知恵を絞っておられるでしょうが、基本的な投資姿勢は誠備時代と何ら変わりはなく、その前途に危ういものを感じざるをえません〉
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source : 週刊文春 2023年7月13日号