小学校時代、国語の教科書で読んだ物語のなかで、今でも記憶に残っているものがある。戦国時代の実話をもとにした「悲願の橋」(作・佐原皓)という作品だ。調べてみたら、学校図書株式会社から刊行された教科書『わたしたちの国語 五年上』で、1959〜60年と1980〜85年に掲載されていたそうなので、読まれた方もいるかも知れない。
愛知県の熱田(あつた)神宮ほど近くの精進川に架かる橋の擬宝珠(ぎぼし、欄干の柱につける装飾)に、女文字で刻まれた文章が残されている。そこには、天正18年(1590)、豊臣秀吉の小田原征伐に従軍して死んだ堀尾金助という18歳の息子を弔うために、その母がこの橋を建立した旨が記されていた。その文章に目をとめた旅人に、地元の僧が橋の由来を語るかたちで物語は進んでいく。
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source : 週刊文春 2023年8月10日号