教員をやっていると、出席簿などで学生の名前を読み間違えないようにするのは、本当に気を使う。苗字は良いのだが、問題は下の名前だ。とくに近年は読みにくい下の名前が増えてきている。ひところ“キラキラネーム”と呼ばれた名前が、その代表例だろう。「夢歌」とか「琉月」とか「大陸」とか「虹色」とか。これ、いずれも実在する名前なのだが、すぐに読めますか? 申し訳ないが、僕にも一発で読むのは難しい(正解は最下段をご覧あれ)。ありきたりの名前を避けることで、子供に個性豊かに育ってほしいと考える親御さんの気持ちはよく分かる。でも、ここまで難読の名前になると、子供本人にはかえって将来的にストレスになるのではないだろうかと、いらぬ心配をしてしまう。いずれにしても、現代日本の名づけ事情は、良くも悪くも“個性”や“音の響き”や“両親の願望”が重視される傾向にあると言える。
その点、室町時代の名づけには、それらの要素はきわめて乏しい。今回は、時代劇や歴史小説の理解にも役立つ、当時の名づけ事情についてご説明しよう。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2023年8月3日号