今、将棋というのはどれぐらいテレビ視聴者に興味を持たれているのか。藤井聡太の出現で「将棋バブル」が確かに起こっているが、名人戦などの中継はテレビから消えて久しく、人が見るのは「藤井聡太くんがまたタイトル取りました!」というニュースと「藤井聡太くんが選んだオヤツが大人気」とかの勝負オヤツ方面ぐらいじゃないのか。
もっといろいろな棋士や将棋を楽しむ人が増えてほしい、とNHKがコツコツと10年以上続けているのが『将棋フォーカス』です。棋士の魅力や将棋の面白さを紹介してくれます!
中のワンコーナーに「将棋講座」というのがあって、番組内でプロ棋士がアマチュア向けに将棋を教えてくれる。『将棋フォーカス』が満を持して(私見です)、4月から講師として起用したのが豊島将之九段である。
数多くの棋士が講師を務めてきたが、就任時に「竜王名人経験者」は豊島さんだけ。すごい先生だ!
そして将棋が強いだけでなく地味でマジメで礼儀正しく物静かな青年。そこに「豊島将之の初段を目指す!スキがない将棋」と銘打たれては、学校のマジメ教師によるマジメ授業で生徒はほぼ寝ます、みたいなものになるのでは。
しかしNHKは「豊島先生をお迎えするにあたってそんな失礼な事態にはさせません」とばかりに工夫をこらしてきた。
NBAファンであるという豊島先生のために、バスケットボールのユニフォーム的なカジュアルウエアと、「パーフェクトな一手」を紹介する時に「両手でPの字をつくってパーフェクトゲーム」という決めアクションを用意してきた。豊島九段のあだ名が「とよぴー」だからP……。さらに、ヘアメイクは「いつも前髪をサラサラと垂らしている豊島先生なのに、ここでは分けて固めてセットしたような髪型」で固定している。とにかく「いつもとはちがう豊島先生だ! 目をさませ!」と言われているようだ。確かに毎回、バスケ風衣裳で、手でPマークをつくって、やや固めの表情で「ぱーふぇくと、げーむ」と言ってらっしゃるのを見るたびに「うわ、と、豊島先生がこんなことを」と動揺する。慣れない。
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source : 週刊文春 2023年8月17日・24日号