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週刊文春「寄付プラン」に関するご報告と“史上初の試み”

編集部コラム 第124回

「週刊文春」編集長
ニュース 社会

 こんにちは。いつもご愛読ありがとうございます。

「週刊文春」では、8月6日から「寄付プラン」なるものを始めました。前回の当コラムでは、「寄付プランの生みの親」について詳しくお伝えしました。

 その後、ありがたいことに大きな反響をいただきましたので、今回はそのご報告です。

 開始後わずか3週間余にもかかわらず、9月1日現在、すでに270万1006円のご寄付を頂きました。ちなみに内訳は、1500円プランの方が98人、3000円プランの方が70人、5000円プランの方が100人、5000円以上の任意の額の方が40人。延べ300人を超える方からのご寄付の中には、おひとりで10万円、20万円、中には100万円という方もいました。

 金額もさることながら、何よりうれしく、ありがたかったのは、寄付者の皆さまからの応援メッセージです。すべてのメッセージに目を通させていただき、何度も読み返しては様々な示唆と、大きなパワーをいただいています。

 直近のスクープだったため、やはり「木原事件」への言及が圧倒的に多かったのは間違いありません。加えて、20年以上にわたって追及を続けてきたジャニーズ性加害キャンペーンへのコメントもありました。ほんの一例をご紹介しますと、

〈ジャニー喜多川氏の件、素晴らしい活躍でした。木原事件も、応援しています。頑張ってください〉

〈木原事件の取材はすごいと思いました。(略)文春だけが報道していることにも憤りを感じています〉

〈日本の報道が本当にダメになっていて、まさにロシアと変わらないと思っています。文春さんが国民の味方というか、頼みの綱です〉

 こうしたメッセージの数々に、“いやいや、そんな大層なものではございません”と恐縮しつつも、身が引き締まる思いです。

 さて、頂いたご寄付は今後の取材費にあてさせていただくわけですが、「LINEやズームもあるし、リモートワークが当たり前のこの時代に、どんな取材をしているの?」という疑問もあろうかと思います。実際、他社の知り合いの記者も、取材は極力、電話とメールですませるようにしているとよく語っています。

 ですが、それは私たちにとっては、とても怖いことです。もちろんリモート取材で済むタイプの記事もありますが、相手方がそう簡単には認めない「不都合な真実」を、きちんと裏を取って報じようと思えば、どうしても時間、手間暇、お金がかかります。今は「文春リークス」という情報提供サイトが、貴重なスクープネタをいただく大変ありがたい窓口になっていますが、それは取材の「はじめの一歩」に過ぎません。

 たとえば少し前に、某大手回転すしチェーンにおける消費期限切れ食材の日常的使用に関する情報提供がありました。電話で話を聞いてみると、お話の内容もしっかりしており、証拠となるような店内の写真などもメールでご提供を頂いた。しかし、それでも「裏が取れた」ことにはなりません。報道する前に、常に「最悪の事態」を想定することが必要になります。この場合、「最悪の事態」の典型例は、ライバル回転すしチェーンの店員が、それらしい店内の写真や寿司ネタの写真を撮った上で、話を作り込み、ライバル店追い落としのために情報をリークしてくるケースです。そうではないことを証明するためには、どうすればよいか。記者は、当然現地に取材に行きます。この時の行き先は東北地方でした。文春リークスに情報を送ってくれた方にアポイントを取り、「疑うようなことを申し上げて恐縮なのですが」などと言いつつ、社員証の類を確認させていただく。あるいは、給与の振り込み記録が記載された通帳や、給与明細などを見せていただく。そうやって本当に当該店舗に勤めていたか否かを確認させていただきます。その上で実際に店舗に食べにいく。その際に、店内の様子や、厨房の位置、提供のされ方や店長の名前などが、取材時の話の内容と齟齬がないかも確認します。もちろん、取材対象者の方の顔色や目の動きを見ながらじっくり取材できるのも、大きなメリットです。

 そのための新幹線代、宿泊費、レンタカー代、すし店での食事代などは、記者1人が出張するだけで優に10万円を超えることになります。たとえわずか1ページの記事であったとしても、事実を書くためにはそうした地道な作業を、ひとつずつ繰り返していくしかありません。さらに、支店も支社もありませんから、北で「首狩り殺人」が起これば4人の記者が北海道に飛び、卓球の元日本代表・福原愛さんの、離婚後の親権を巡る問題が起きれば、台湾まで即座に飛んで取材をする。

「木原事件」においても、最大10人を超す記者が全国各地の関係先を駆けまわりました。2006年当時の事件現場付近を、亡くなられた安田種雄さんの御遺族とともに「実況見分」もしました。どこの角から、どのような怪しい人物が出てきたのか……。こうした徹底的な「裏取り」のために、貴重なご寄付を活用させていただきます。

 応援メッセージの中にはこんな言葉もありました。〈電子版での動画を見て、社員の方々の表情、発言を見聞きしていると、かなり信頼感が高くなり、積極的に支援する気になりました〉

 こうしたお声をいただくと、「文春記者トーク」という音声番組や、さまざまな動画イベントを通して、文春記者が読者の皆様に直に思いを伝えることの大切さを改めて感じました。

 というわけで、ご寄付をいただいた方を対象に、10月7日(土曜)の夕刻から、「週刊文春」史上初の「文春サポーターズ・ミーティング」(仮称)を開催したいと思います(詳細は後日メールでご案内いたします)。

 木原事件の担当のKデスクも、寄付プランの生みの親の村井弦君も、もちろん私も参加予定です。

 週刊文春の新たなチャレンジに、さらなるご支援を、よろしくお願いいたします。    

「週刊文春」編集長 竹田聖

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source : 週刊文春

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