こんにちは。いつもご愛読ありがとうございます。

 先日から、「文春オンライン」上でとても興味深い同時進行ドキュメントが掲載されています。〈埼玉本庄5歳児虐待死公判〉。昨年3月に、埼玉県本庄市の借家の床下から、柿本歩夢くんの遺体が見つかったこの事件。5歳の男の子が、実母と、居候先の内縁夫婦、計3人の大人から凄惨な虐待を繰り返し受けていたとのニュースをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。

 この事件の公判が8月末から、さいたま地裁で始まりました。公判を傍聴に行き、改めて分かった事実を交えながら、あまりに惨い虐待事件のことをきちんと報じ直したい――そうした思いで埼玉に日々通ったのが、石垣篤志記者。8月下旬に、「週刊文春電子版」で〈26年目のレジェンド記者が語る事件取材の極意〉と題したウェビナーに登場した記者です。

 成果の詳細は、こちらをお読みいただきたいのですが、実はこの記事、紙の「週刊文春」には載っていません。

「週刊文春」は号によってバラつきはありますが、だいたい120ページほど。そのうち、ニュースに使えるのは30ページから40ページです。今週号も、17歳の誕生日を迎えられた悠仁さまをめぐる話題や、原発処理水で緊張が高まる日中関係を扱った特集、風雲急を告げるジャニーズ事務所の関連記事など、「今週マスト」の記事が多々ある中で、なかなか過去の事件に紙幅を割く余裕はありません。

 しかし、オンライン上であれば、紙幅の制限もないし、毎週木曜日という発売日にとらわれることもなく、日々行われる公判の様子を取材して、即座にアップしていくことが可能です。ただし、「傍聴」といっても、週刊誌記者にとっては簡単なことではありません。大手紙やテレビからなる記者クラブ所属の記者は、裁判所にもきちんと席が用意されていて、常に傍聴できますが、週刊誌記者にそうした「特権」はありません。このような注目事件をめぐっては倍率が数倍、時には数十倍になることもあります。今回も傍聴券のために、まずは当日、埼玉まで出向いて地裁前で整理券をもらい、抽選を待ちます。外れれば当然、傍聴できません。石垣記者も、取材で知り合った関係者や、時にはご家族も動員して当選確率を上げる手立てを講じたそうです。

 石垣記者に初めてオンライン上で公判の同時進行ドキュメントを書いた感想を聞いてみると、「記者としては、1度取材をして気になっていた事件のことを、一報だけで終わらせず、最後まできちんと書ける場があるのはありがたい」と充実の表情でした。

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source : 週刊文春