10月20日に89歳の誕生日を迎えられる美智子さま。初めて民間から皇室に嫁いだプリンセスは、孤独と苦難の道のりをいかにして歩んでこられたのか。そのお姿を見つめてきた10人の証言で綴る、89年のご足跡。
品川区・五反田の邸宅の間に、小さな花園がひっそりとたたずんでいる。「ねむの木の庭」と呼ばれるこの公園を今年7月、1組の老夫婦が、手を握り合ってゆっくりと歩いていた。
公園は、かつて日清製粉の会長を務め、99年に死去した正田英三郎の自宅の跡地に作られた。園内を彩るのは、英三郎の長女が折々に詠んだ歌にちなんだ花木だ。
「あのとき、美智子はどうしてたの」「これは何のときだったかな」
夫の問いに、目を細めて答える妻。正田家の長女として生まれ、「国の母」として平成の世を見守ってきた上皇后、美智子さまだ。
かつて公園の整備を担当した会社に勤めていた縁で、長年案内役を務める樹木医の金原正道(81)が言う。
「両陛下をご案内したのは4年ぶり。以前はおそばに区の者が同行していましたが、今年は側近などごく一部を除いて園内には入らず、外から見守るような形でした。終始手をつないで歩かれるのも、これまでなかったこと。寄り添うような姿に胸を打たれました」
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source : 週刊文春 2023年10月26日号