フジテレビ「SMAP×SMAP」の収録前。スタジオの手前にある前室で、この日、僕は木村拓哉さんに新しいコントの提案をしていた。「木村拓哉が当時流行り始めていたギャル店員になる」というコント。でも木村さんは、この提案に「う〜ん」と悩み、首を縦には振らなかった。自分がこの格好をしたら面白いのはわかるけどノリきれない、という様子。木村さんは、そのコントがどう展開したら面白いのかというところまで見えてこないとOKしないのだ。そんな打ち合わせ中に、次に収録する「BISTRO SMAP」のゲスト、爆笑問題さんがやってきた。太田さんは、僕らを見て「どうしたの?」と興味津々。僕がギャル店員のコントの話をすると太田さんはすぐに「やった方がいいよ!」と言ってくれた。そして「スマスマはね、事件が見たいんだよ」と言った。「SMAPがこれをやったか! っていうのは事件になるのだから、毎週小さくてもいいから何かしらの事件が見たいんだよ」と。太田さんのアシストのおかげで木村さんもノってくれ、コントは作られ人気となった。

 太田さんの「事件」という言葉で、僕はハッとした。スマスマだけじゃない。テレビっていうのは事件を見たいんだ。

 企画はもちろんだが、その人間自体に「何か起こしそうな感じ」がある人が見たいのだと思う。たとえば、YOSHIKIさんや市川團十郎さんなんかがテレビに出ると事件を期待してしまう。僕はそういう人たちを「かぶき者」と呼んでいる。

 沢尻エリカさんにも、僕は同じ魅力を感じる。

 今から書くことは、ずっと胸に秘めていたエピソードだ。僕は2008年に公開された映画「ハンサム★スーツ」の脚本を担当した。ドランクドラゴンの塚地さん演じるモテない主人公が、ハンサムになれるスーツを手に入れ、それを着て別人のような男になるという物語。このハンサムを谷原章介さんが演じている。

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source : 週刊文春 2023年11月9日号