犬の命・ヒトの命|清水克行

室町ワンダーランド 第77回

清水 克行
ライフ 教育 歴史

 先日、仕事をしながらテレビのニュース番組を見ていたら、急に、こんな言葉が耳に飛び込んできた。

「進入してきた自動車にはねられ、娘の〇美さんは軽傷を負い、……は死にました(、、、、、)

 思わず手をとめて画面に顔を向けた。「死にました」? 「亡くなりました」の間違いじゃないの? てっきり粗忽なアナウンサーによる放送事故かと思ったが、よく聞いてみたら、「死んだ」のは軽傷を負った娘さんの飼い犬のことらしい。

 さすがに犬に「亡くなりました」という表現を使うわけにもいかず、「死にました」としたのだろうが、それにしても、ちょっとモヤモヤする。通常、「亡くなる」はヒトに対して使うもので、動物に使うのは誤りとする辞書もある。でも、ペットに「死にました」というのは、少し冷たい気もする。同様に、現代では店員がお客の連れているペットを呼ぶときの呼び方も、難しいものがあるらしい。大事なお客さまとはいえ、まさかペットを「お猫さま」「お犬さま」と呼ぶわけにもいかない。

 かつては犬・猫とヒトの境界は明確に区分されていたが、いまやペットは家族の一員。僕らの社会では、犬・猫とヒトの境界が少しずつ溶解し始めているようだ。翻って、中世と呼ばれる鎌倉時代から室町・戦国時代のヒトと犬の関係は、どのようなものだったのだろう。

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source : 週刊文春 2023年11月16日号

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