パレスチナの武装組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃してから始まったイスラエル軍によるガザ攻撃。停戦の見通しもないまま現地からは悲惨な映像が届きます。今回の事件でハマスによる攻撃を受けた場所に海外のメディアが入ることをイスラエル軍が認めました。以下は現地を取材した新聞記者のレポートです。
〈(10月)20日、イスラエル軍が一部メディアにパレスチナ自治区ガザ地区との境界から東に約5キロのキブツ・ベエリを公開した。ガザのイスラム組織ハマスの急襲で、初めに犠牲になった集落の一つだ。人口の約1割にあたる100人以上が殺害され、また多くが人質として連れ去られた。(中略)イスラエル南部には、ベエリをはじめとした「キブツ」と呼ばれる集落が点在する。20世紀初頭以降、ユダヤ人が荒れ地を開拓して築き、発展させてきたコミュニティーだ。真っ先にハマスの標的になったのがこれらのキブツで、ベエリには数十人の戦闘員が銃を乱射しながら押し入った〉(朝日新聞電子版10月21日付)
この記事を読んで「キブツ」とは何かと疑問に思った人もいることでしょう。その一方で、私やその上の世代にとって、「キブツ」とは懐かしい響きの言葉です。1960年代から70年代にかけて、キブツの理想に憧れて、イスラエルまで出かけていって住み込んだ日本の若者たちもいたからです。
そもそもキブツとは何か。今回は、この特異な取り組みを紹介しましょう。キブツとは、端的に言えば、イスラエル国内で共産主義社会を構築しようとした取り組みなのです。イスラエルといえば、もちろんアメリカ寄りの資本主義国。それなのに、なぜ共産主義がここで出てくるのでしょうか。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
コメント機能も使えます
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2023年11月30日号